2006年3月 1日
[月刊MD]増える企業買収、自己変革へとつなげられるのか?

 日本企業が関係する昨年のM&Aの数は2552件で、過去最高となったそうだ。グローバルレベルでみても、米国の9042件に次ぐ2番目で、一昨年の4位から2つも順位を上げた。ちなみに3位は英国2425件だそうだ。(米調査会社トムソンファイナンシャル)
 資本と経営を分離し、株主の責任を出資した金額の範囲内で有限とし、株式を公開して売り買いする株式会社という仕組みを創造したのは英国である。そのアングロサクソン文化を受け継ぐ米国とともに、両国はもともと会社を売り買いする経済文化を持っているので、数が多いのは当たり前なのだが、日本という非アングロサクソン文化を持つ国が、つまり会社を売り買いするというやり方にあまり馴染まないと言われてきた国が、英国を抜いて2位になるということについては、何事かを感じなければならないだろう。

 これをグローバル化と称するのは早計である。アングロサクソンとは一線を画す大陸欧州は日本と似た経済文化を持っており、従って会社を頻繁に売り買いする習慣は米英に比較するとあまりない。つまりM&Aが多いのはアングロサクソン文化圏固有の特徴であり、とするならば日本の現状はグローバル化ではなくてアングロサクソン化、と表現するのが正しいのである。
 M&Aが増えた理由は、世界的な金余り現象を背景に、大口の海外マネーが景気上昇局面にある日本市場に流入したから、となっている。それだけではあるまい。好き嫌いは分かれるだろうが、米国で生まれて定着したバイアウト(一般的には投資ファンド)が日本でも認知されてきたこともあるのだろう。経済界のお歴々たちのコメントを聞くに、資本と経営を同一に扱う昔ながらのやり方に固執しているようだが、若き新興経営者たちは抵抗無く企業売買を実行しようとしていて、時代の流れは明らかにアングロサクソン化へと向かっている。
 国を挙げて海外資本の流入を促進していることも理由の一つだろう。バブル崩壊で銀行がダメージを受けて国内資本の流動性が滞ってしまったため、海外資本の力で経済の活性化を図ろうというわけである。
 アングロサクソン型は好むと好まざるとに関わらずグローバルスタンダード化しているのだが、なぜそうなっているのかというと、偶然彼らの文化が今の時代にマッチしてしまったからである。その文化とは、何事も理路整然と体系立てて理解し、その体系に従って必要に応じて機能別に分解していこうとする分解主義(またはアンバンドル主義)であり、アンバンドルした後のコアコンピタンス機能以外はアウトースする分業主義であり、そして枠組みをすべて作る前にまずは始めて走りながら組み立てるデファクトスタンダード主義、といったところである。
 その特徴を一言で言えばスピード感だ。企業ならば、部門・機能別に解体し、不必要な部門・機能は売却し、逆に必要な部門・機能は買収し、という一連の動きが非常に早い。製造はアジア、R&Dは本国、というような機能ごとの国際分業も得意とするところだし、コアコンピタンス以外を分離し外注するアウトソース分業も彼らのお家芸と言える。
 今の時代、スピードが企業の命運を握るといっても過言ではない。ネットの普及による情報普及の速度と範囲が、ものごとの陳腐化をいっそう早めている。商品改廃の期間、店舗改装のインターバルなど、一昔前の半分くらいになっているのではないだろうか。
 アングロサクソン国家に多いM&Aという企業の売り買いも、資本と経営を分離させる基本理念に加えて、このアンバンドル型の文化によるものと考えると分かりやすいだろう。結果として彼らの経済は、ダイナミックに急速に変化して行く。そしてこの変化の早い時代に、彼らの手法が偶然マッチしてしまったのである。
 我が国は戦後60年を超え、経済システムがそろそろ制度疲労を起こしつつある。そのため変革は焦眉の急で、この変革の一手段として海外資本の流入があり、M&Aの増加がある。だからアングロサクソン化することに抵抗を覚えつつも、日本の明るい未来のためには仕方のないことなのだろうとも思うわけである。

<続きは月刊マーチャンダイジング06年3月号をご覧下さい>

鈴木敏仁 (02:34)
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