アメリカ流通eニュース
とある流通シンクタンクがウォルグリーンに関するレポートでおもしろい記事を載せていたので、今回はこれをテーマとする。
「ドラッグストア業態においては、特定リテーラーに対する消費者ロイヤルティはほとんど存在しない。(アメリカの消費者は)ドラッグストアを選択するときは車で2縲鰀3マイル程度までなら喜んで行く(つまり2縲鰀3マイルと越えると行かない)。ウォルグリーンによる、お客の2マイル圏内に立地するという戦略は、だから機能している。06年現在で、1億3180万人がウォルグリーン店舗から2マイル圏内に住んでいるのである」。
お客が特定ドラッグストアにほとんどロイヤルティがないということが業界のリスク要因であり、ウォルグリーンはだからコンビニエンスを前面に押し出す戦略を長く取ってきて、その結果成功している、ということを言おうとしている。
これを読んで、思うことが多かった。
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まず最初に、この記事は20年アメリカに住んでいる私が持っている感覚とまったく同じであることを確認しておく。我が家からは、ライトエイド、ボンズ、ロングス、ウォルグリーン、の順番でドラッグストアが存在する。一番遠いウォルグリーンまでは15分ぐらいかかる一方、最も近いライトエイドまでは2分程度である。
ウォルグリーンは店内が整然とし、調剤薬の欠品も少なく、オンライン調剤の仕組みも非常によくできていて、しかも店数が多いので便利である。一方のライトエイドは、店内が分かりづらく、雑然とし、欠品していることもあるし、開店時間に制限もある。気分的にはウォルグリーンの方が当然優位なのである。
しかしながら、処方せんを医者からもらい、さてドラッグストアへ行くということになると、けっきょくライトエイドに行ってしまうのである。ウォルグリーンがそばにあればいいな、と内心思いつつ、やはり近い店を選択してしまう。
この選択時に、服薬指導の良さとか薬剤師の個性、といったものは判断基準にはあまりならない。薬剤師というものは、基本的にはみないい人ばかりだし、服薬指導も決められたことを言っているにすぎないからである。
だから、アメリカにおいて、「特定ドラッグストアに対して消費者はロイヤルティを持っていない」というシンクタンクの表現は、あまりにも的を射ていると感じたのであった。
このレポートを読んで思ったことは二つ。
一つ目は、日本でよく使われる‘かかりつけ薬局’という表現のもろさである。たぶん、面分業が進みドラッグストアが調剤を取り込むという戦略の象徴として使っているのだろうと思う。その意気や良し。しかしながら、実際のところ調剤サービスだけでお客をかかりつけることは、アメリカを見る限り不可能なことなのである。もちろんお客にとっては、良い薬剤師であるとか、そういうことは検討項目ではあるけれど、お客は結局、ロケーションで調剤薬局を選択してしまうものなのである。
二つ目は、ドラッグストア業界には‘ロイヤルティ’をことさら強調する人がいるのだが、これも結構もろい、ということである。例えばロイヤルティマーケティングにリソースを投入するよりも、ロケハンに大量投入するほうがおそらくよほど効率が良いだろう。
★アメリカで使う表現はコミュニティファーマシー★
いろいろな意味において、アメリカのドラッグストア業界は日本の少なくとも10年は先を走っていて、だからアメリカをベンチマークするということはよくわかる。しかしながら、表面だけみて持ち込むと、木を見て森を見ないということになるのだが、その好例じゃないかと思っている。
または、日本で都合の良いように解釈しているのかもしれない。それはそれでいいのかもしれないが、アメリカでの実情を捻じ曲げながら持ち込むのは、どうかなとも思う。
参考までに、米ドラッグストア業界で使われる標語は、コミュニティファーマシーである。患者を‘かかりつける’、などと恐れ多い言葉は使わない。地域に溶け込んだ調剤薬局、とする。こちらの方が実情に即し、さらに企業のエゴも感じず、地域住民のためにあるという意味が伝わって、よほど良いと私は思っている。
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