2007年9月10日
「Save Money. Live Better、変わるウォルマートのブランドプロミス」Vol.11,No.37

アメリカ流通eニュース

 アメリカのリテーラーのほとんどは短い企業キャッチコピーを持っている。店頭、ホームページ、チラシなどを見ると、企業名の後にくっついている短い文が必ずあるので分かると思う。英語ではタグラインとも、モットーとも呼ばれる。マーケティング用語でブランドプロミスとも呼ばれる。
 ウォルマートは19年間にながきにわたって'Always Low Prices'を使用してきた。これを、'Save Money. Live Better.'に変えたのである。正式発表は12日、ホームページを見るとすでに変更されている。
 このタグライン、実は企業ミッションのシンボルとしている企業がほとんどであり、つまりウォルマートの変更は彼らの戦略転換の象徴として見ることができ、小さいように見えてじつはかなり大きなニュースなのである。

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 昨年頃から巷間言われてきたのは、このキャッチフレーズと同じようにシンボル化されているスマイリーを削除するのではないかと言うことであった。シンボルマークは後回しとして、まずはキャッチフレーズの変更に着手したわけである。おそらくスマイリーにも手を入れるだろうと私は考えている。
 この変更発表と同時にマーケティング担当役員(CMO)ステファン・クィンがコメントしているのだが、これを読めばいかに重要なコピーであるかが分かるだろう。「Save Money. Live Better.はタグライン以上のものだ。4つの重要な単語に我々のミッションを集約している」。
 つまりプロモーションとして短期的にお客にアピールするための単語の羅列ではなく、企業ミッションの集約なのだということを言明しているわけである。
 加えて同社は新しいCMシリーズの放映を開始しているだが、これも今までとはトーンががらりと変わったものとなっている。
 ウォルマートの駐車場から始まる。6人家族がミニバンに乗り、フロリダに向かって長旅を開始し、モーテルに泊まり、最後にオーランドに着く(たぶんディズニーワールド)というストーリーなのだが、途中一度も商品は登場しない。ウォルマートも連呼せず、レジ袋にウォルマートロゴがちらっと出るだけである。
 言おうとしていることは、ウォルマートで節約するとオーランドに行けるであり、つまりSave Money(お金を節約すれば)、Live Better(暮らしがベターになる)、につながるのである。これは、ウォルマートで買い物をすれば年間2500ドルの節約になるというシンクタンクによる調査が元になっているそうだ。
 今までのメッセージはほぼ価格が主体だったので、大きな転換である。またお金を節約することによる恩恵を前面に押し出すというブランドプロミスは、過去の小売業界には存在しなかったユニークなものと指摘されてもいるのである。

★戦略大転換のシンボル★
 ‘安い’ではなく‘節約’とし、‘生活を豊かに’というフレーズをつけ加えたことからは、価格指向オンリーからバリュー指向へと微妙にシフトしたことを感じ取ることができる。そしてこのフレーズが企業ミッションを集約したものと言うわけだから、ウォルマートの社風にも影響を及ぼすことだろう。戦略転換の象徴と考えてよいと思う。巨大な企業だけに時間がかかっているのだが、変わろうとしていることは確かなのである。
 ちなみに日本の小売企業の大半は見過ごしているのだが、米国企業の大半は必ずキャッチコピーでブランドプロミスをしている。お客だけではなく、社員に対するメッセージでもあり、変わることのない企業文化を構築しようとするならば、実は極めて有効な必須のテクニックなのである。

鈴木敏仁 (01:30)
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