2008年1月 7日
「苦戦中のタルボット、別フォーマットを撤退して本体に集中」Vol.12,No.02

アメリカ流通eニュース

 イオンが大株主として知られるアパレル専門店チェーン、タルボットが苦戦している。
 別フォーマットとして展開していたタルボットキッズ66店舗とタルボットメンズ12店舗を年内に全店クローズし、本体にリソースを集中することを発表した。
 この撤退は昨年10月に発表された戦略的レビューの一環である。2四半期連続で赤字を計上中、歳末を含む第4四半期も予想を下回るであろうことを同時に発表、本体の業績が悪化しつつあり、別フォーマットの育成に手をかけている余裕がなくなりつつあるのである。

 タルボットがキッズフォーマットを開発したのは90年、メンズフォーマットへの参入は03年のことである。ということは、前者はおよそ16年かけて66店舗、後者は3年で12店舗ということになる。この成長はアメリカの専門店業界ではやはり遅い。同社の説明でも、やはりあまり利益に貢献はしてこなかったようである。
 この二つのフォーマットは本体に隣接するように立地していることが多い。本体のターゲット層は35歳以上の普通の女性で、ついでに子供や旦那の服も買ってもらうことを意図している。ギャップの戦略に近い。
 これがあまり機能しなかったわけだが、特にメンズがだめだったようだ。開発当初から指摘されていたのが、中年女性のブランドであるタルボットで男が衣料を買うだろうかという疑問であった。
 私自身、タルボット=中年女性、というイメージが出来上がっていて、男にとってかっこいいというイメージはまったく想起できない。タルボットと聞くだけで、赤いファザードとコンサバなミッシー衣料を思い浮かべてしまい、ここで自分の服を買おうとは思えないのである。
 それだけ強烈なブランディグに成功したわけで、だから4桁超えるまで成長できたとも言える。強いブランドイメージが逆にメンズ事業の足かせとなったというわけである。
 さて本体の苦戦なのだが、挙げられている理由をまとめると、景気のスローダウン、ファッショントレンドの変化、デパートメントストアの復活、の3つである。
 景気については言わずもがなだが、とりわけ物価や景気に敏感な、世帯の財布の紐を握るミドルの女性を対象としている業態は、景気の影響を受けやすいと言うことができる。トレンドの変化とはタルボットのコンサバなデザインが飽きられたこと、デパートの復活とはJCペニーやメイシーズを指している。
 この3つに、ファッションサイクルの短縮化、ブランドイメージの疲弊、そして同社の成長を長く牽引してきたCEOゼッチャーの引退の3つをさらに加えることができると思っているのだが、とりわけ最後のゼッチャーの引退が大きそうだ。
 87年からおよそ20年間にわたってCEOを勤め、タルボットの成長の大半はこの人の功績といって良い。店舗に足繁く通い、デザインの決定にも関与するなど、現場主義の衣料の専門家であった。2月に引退し、後任は他社から引っ張ってきている。
 アメリカの小売業界の歴史を鑑みるに、他社から経営者をヘッドハントして成功する確率は高くない。成功させるには、現役CEOの下で移籍後何年か働き社風を理解し社員の支持を得るというステップが少なくとも必要だろうと私は考えている。タルボットの場合、ゼッチャーがまず引退しそれから後任を選任している。新CEOのサリバンが同じアパレル業界からというのが救いなのだが。

★新たな経営者に託される業績の回復★
 とりわけアパレル専門店は、自らの感性でデザインにこだわる経営者が必須なのではないかと言うのが私の考えである。成長企業には必ずそういう経営者がいて、成長が止まるときはおおよそそういう経営者が抜けてしまったときである。ギャップやパシフィックサンウェアなど、成長を牽引した経営者が抜けたあとに業績が悪化し苦戦する企業の例は少なくない。
 そう考えると、サリバンが今後どう舵を取ってゆけるのか、歴史を繰り返してしまうのかどうか、外野として非常に興味深い。再生の手腕に注目が集まるところである。

鈴木敏仁 (12:54)
ペプシネックス



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