2008年3月24日
「ターゲットが自社クレジットカード事業の売却を検討中」Vol.12,No.12

アメリカ流通eニュース

 ターゲットの自社クレジットカードが、カード業界ランキングで全米10位になったという話を一昨年の6月に書いた。米国小売企業は自社クレジットを運営しないのがトレンドなので、この10位と言うランキングは突出していた。
 それ以来、変わらず強化戦略を取って会員数が増え、収益も上がってきているのだが、当時からリスクを指摘する声が多く、しかし経営側がその戦略性とタイトな管理体制を訴えて正当化する、ということが繰り返されてきた。
 しかしとうとうこの事業の売却を考え始めた。株主のプレッシャーに負けたようだ。

 昨年7月にパーシング・スクェアという投資会社が同社の株式の9.6%を取得した。この企業のオーナー、ウィリアム・アックマンはアクティビスト型の投資家として知られ、過去ウェンディズやマクドナルドなどを買って、コスト削減や不採算事業の売却を迫り、企業を動かし、株価を上げ、利益を得る、ということを繰り返してきた人である。
 アックマンはターゲット株を大量に買った直後から、クレジットカード事業の見直しを経営陣に要求し始めたようだ。企業側は今年度の第1四半期までに査定を終えると約束し、これがメディアをして売却するのではないかという憶測を流さしめることになっている。本社があるミネアポリスのローカル紙が7月に報じて、ターゲットが否定するということがあった。
 先月末の決算発表時にはクレジットカードの好調さをアピールしていて、売却するというそぶりも見せていなかった。つまり今回の売却予定のニュースはかなりのサプライズなのである。いまから考えると噂が流れるということは、売却というオプションがもともと存在していたのだろうと想像することができる。
 ただし正確には事業を丸ごと売却するのではなくて、売掛債権80億ドルの半分にあたる40億ドルの売却である。また現時点では最終決定ではなく交渉中の段階である。ちなみに買収企業としてJPモルガンの名前が浮上している。
 さてこの売却プランをどう見るかだ。
 結局クレジットカードと言う事業は、諸刃の剣なのである。
 ターゲットの税引き前の営業利益に占めるカード事業の比率は昨年の第4四半期で26%に達している。一昨年が17%なので、急増と言う表現が正確である。儲かっているのだからいいだろうと簡単には言い切れない。急増させると言うことは、審査を甘くして会員を増やしている可能性があり、これを投資家は問題視している。とりわけこれから景気が悪化すると焦げ付きが増えるのではないかとう懸念が強まっているのである。
 またビジネスモデルがまったく異なる事業にリソースを投入するのはどうかという意見もある。そのリソースを小売に投入すればもっと良い会社になるだろうという主張だ。
 一方、利幅の低い小売ビジネスにおいて、こういう関連事業はおいしい。他社でも使えるクレジットカードなので、他社の販売動向がつかめるというメリットもある。また同社はカードをブランディング活動の一環とみなしており、つまりターゲットと言うイメージを作るツールの一つとみなしてもいるのである。
 結局アメリカはデメリットに注目してやめるリテーラーが多く、日本はメリットに注目して各社乗り出しているというわけだ。他事業の利益に頼り始め本業が甘くなって失速したシアーズという好例がアメリカにはあり、これを教訓としているのかもしれないと考えている。

★投資家が経営陣を動かす★
 今回の売却プランが吉と出るか凶と出るかは現時点では分からない。ただ投資家が売却を促したという点には注目したい。日本ではスチールパートナーズのおかげか、一般的にこういうアクティビスト型の投資家にアレルギー反応を起こす傾向があると思うのだが、経営陣が正しいと思っていても、外から客観的に眺めると間違っているということは少なからずある。
 例えばホームデポによるプロフェッショナル事業の売却は投資家によるプッシュだったが、そのロジカルな見通しの説明に経営陣が納得してしまったと言う経緯があった。経営陣を説き伏せるロジックを投資家が持っているというわけで、アメリカの投資市場の成熟を感じさせる事実ではある。
 ターゲットによる事業売却の是非はとりあえずおいて、投資家と企業の関係というものをいろいろ考えてしまったのであった。

鈴木敏仁 (01:45)
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