2008年4月21日
「ブロックバスターがサーキットシティに買収提案」Vol.12,No.17

アメリカ流通eニュース

 ブロックバスターというビデオのレンタルチェーンがある。年商55億ドル、1ドル100円換算で5500億円、店舗数は5,000を超える。参考までに日本の同業態のカルチュア・コンビニエンス・クラブが連結で2100億円なので、日本の最大手の2倍ほどの大きさである。
 この企業が、家電ディスカウンター2位のサーキットシティに買収を提案していることが明らかとなった。サーキットシティの年商は124億なので、売上高で2倍以上、株の市場総額もサーキットシティの方が圧倒的に大きい。レンタルビデオチェーンによる家電チェーンストアの買収提案という奇抜さとあわせて、大きな議論を巻き起こしている。

 サーキットシティの業績は悪化して久しい。理由は自己改革を怠ってきたことにある。競合のベストバイが絶えず変革を繰り返し先へ先へと進んでいるのに対して、これを後追いする、または後も追えないという会社で、魅力ある店舗を作れないでいる。またウォルマートやコストコといった強い総合業態も今が旬の家電強化に余念がなく、周囲を完全に包囲された状態だ。
 財務的には赤字が続いて、そろそろ倒産かという噂も出てきているほどである。
 一方のブロックバスターについては、ビデオをレンタルするモデルがいつか役割を終えると言われて久しく、そしてその言葉がそろそろ現実味を帯びてきているといわれている。ケーブルTVがオンデマンド型のサービスを始めたり、アップルがレンタルを初めたり、メールオーダーレンタルが伸びたりして、フィジカルな店舗でDVDを借りるというスタイルが時代遅れとなりつつあるのである。
 ウォルマートなどのチェーンストアが安く売ってしまうのも、市場の地盤沈下に一役買っている。
 つまりこのディールはいわば負け組み同士のカップリングであり、企業力という観点から明るい見通しを立てることが難しい。こういう場合、1+1=2とならないことは、過去の歴史が雄弁に物語っている。
 カギを握っているのがブロックバスターを経営するジム・キースという人物だ。前セブンイレブンのCEO、8年連続の既存店成長率アップを成し遂げ業界評価のすこぶる高い人である。ブロックバスターでも経費削減や店頭ボリュームのアップなどで赤字を黒字に転換している。
 サーキットシティとのカップリングも、もともとはこのキースのアイディアである。パートナーシップを思いついて交渉を持ちはじめたが、提携ではなくて資本を融合した方がより効果が高いと判断したと語っている。
 このキースが買収後の企業融合をどこまでハンドルして、シナジーを出せるかに成否がかかっているというのが私の見立てである。
 キースは、両社の合併によるコスト節約だけでも買収価値があると言い切っている。またブロックバスターには音楽プレーヤーなどの小型家電を、サーキットシティにはレンタルビデオを置くことで、シナジーが出るとしている。

★比重が高い資本の論理★
 さらに両社ともに投資家が背景にいて、‘営業の論理’だけではなくて、‘資本の論理’でディールが動く比率が高そうだ。ブロックバスターの後ろには有名なカール・アイカーンという人物がおり、負債比率の高いブロックバスターの資本調達の裏づけをしている。
 一方サーキットシティの大株主マーク・ワットルは現CEOショノバーの解雇を求めて委任状争奪戦をしかけるなど、現在の経営に不信感を持っていて、ブロックバスターによる買収提案を受けるよう動いている。
 ちなみにこの人はハリウッドビデオというブロックバスターの競合企業の創業者だ。アイカーンがハリウッドビデオの主要株主だったこともあり旧知の仲で、両者が背景でディールを推進しているのである。
 サーキットシティ側がどうこれから動くかは興味深い。もし拒否した場合、ブロックバスターは敵対的な買収に踏み込むのか。業界の注目が大きく集まっている。

鈴木敏仁 (02:03)
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