アメリカ流通eニュース
ウォルグリーンが販促什器にRFIDを取り付けて、プロモーションを管理するプログラムを実施していることは、一昨年末にここで書いた。販促什器の設置と撤去のし忘れ、ロケーションの間違いといった店頭ではよくあるミステークを防ぐ仕組みなのだが、将来的にはこれにPOSデータを組み合わせて、各店舗のロケーション別の販促効果を測定しようしている。
もともとRFIDは単品ごとに貼り付けて各商品を管理しようという、バーコードの代わりになることを目的としているのだが、ウォルグリーンはハードルが多いこの取り組みから離れて、自由な発想でRFIDを小売業に利用しようとしている印象が強い。
このウォルグリーンの手による、RFIDを実装した配送センターの情報が公開された。
場所はサウスカロライナ、昨年オープンしたセンターで、約1年間実証実験し成果を上げたので、二つ目の配送センターへの設置がすでに決まっている。
仕組みを簡単に説明する。
まず全コンテナ17万個にEPCの第二世代パッシブ型RFIDタグが貼り付けられ、これを識別するRFIDポータル(リーダー)は発送用ドックを中心として45ヶ所に設置されている。また台車にもRFIDが貼り付けられている。インフラはBlue Vectorというベンダーが提供している。
店舗から発注データが来ると、センターの管理システムがBlue Vectorのシステムサーバーとデータを自動で共有する。発注データに基づいたピッキングリストを持った担当者が、コンテナをスキャンすることで、ピッキング用のバッチデータと各コンテナが関連付けられる。そして空のコンテナを持った担当者が商品をピックするためにRFIDポータルを通り過ぎると、Blue Vectorシステムも発注バッチデータと各コンテナを認知する。
商品が積載されたコンテナを担当者が台車に乗せ歩き出すとRFIDポータルがコンテナと台車を認知する。台車にRFIDが貼り付けられている理由は情報精度を上げるためである。この時点でシステムはこの台車とコンテナがどのドックに行くべきかを把握している。
配送ドックでは別のRFIDポータルが認知、もしドックを間違えると警告ブザーが鳴ってエラーを知らせる。また一つのトラックが数店舗をまわるためにコンテナの積載順序があり、これも間違えると警告ブザーが鳴るようになっている。
指定されたトラックにコンテナが積まれると、Blue Vectorシステムが店舗にASN(Advanced Shipping Notice、事前出荷明細送付)を送る。
空のコンテナが店舗から戻ってくると、これをRFIDポータルが認知し、次の使用の準備を待つことになる。
ウォルグリーンは第一段階として倉庫内で働く従業員の管理精度を上げることを目的とし、配送ミスとペーパーワークの削減の実現を最終地点としたそうだ。実証実験によってこの最終目的の実現が可能なことが分かり、他のセンターへの水平展開を始めようとしているのである。
★導入事例を着々と積み上げるウォルグリーン★
RFIDによる単品管理はウォルマートが先導しているのだが、亀の歩みのように遅い。タグの精度やコストなど理由はいろいろあるが、業界標準システムの欠落が足を引っ張っていると言われている。各小売企業が異なるシステムを採用すると、各メーカーも異なるシステムを導入せざるを得なくなるため、二の足を踏んでしまう。
“インターネットというインフラに対してブラウザはIEやFirefoxを自由に選べる”が、“RFIDというインフラに対してブラウザは発信者の特定システムに依存する”となってしまっていて、このシステムが乱立しているのが現状なのである。
こういう環境の中、ウォルグリーンはRFIDが持っている本質的な特性、つまり“物体の移動を動的に把握する”という機能に着目して、異なる領域での活用をどんどん進めているというわけだ。RFIDイニシアチブではスポットライトはいつもウォルマートに当てられるのだが、ウォルグリーンも実は先駆けて前進しているのだということはあまり知られていないのではないだろうか。
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