2008年12月15日
「フレッシュ&イージー100店舗目オープン」Vol.12,No.51

アメリカ流通eニュース

 先月の11月12日にフレッシュ&イージーが100店舗目をオープンさせた。一号店のオープンが昨年の11月8日のことだったので、1年間で100店舗を開店させたことになる。途中3ヶ月間新規出店をストップさせたこともあって予定よりも若干遅いペースとなっているのだが、来年中には当初の目標であった200店舗に達することは間違いないだろう。
 テスコが10月に半期の決算を出したのだが、そこで出された数値を元にすると総売上高はすでに5億ドルを超えていることとなり、日本の中堅ドラッグストアの年商並みとなっている。その成否はとりあえずおいて、わずか一年間でこの規模のチェーンストアを作ってしまうところにテスコという企業の高い技術を感じるのは私だけではあるまい。

 11月初頭の時点でフレッシュ&イージーが展開しているのは、南カリフォルニア(49店舗)、フェニックス(26店舗)、ラスベガス(25店舗)の、3つの商勢圏である。この3都市は飛行機で1時間程度の距離で決して近いわけではないのだが、実は車で6時間強走れば到着する距離で、つまり一つの物流センターでカバーできるエリアなのである。
 ロサンゼルスにオープンさせた物流センターは500店舗を網羅できるキャパシティを持っており、マキシマムまで稼働させることはないとしても、おそらく300店舗程度を突破しないと損益分岐点は越えないだろう。つまりこの3都市圏内で300店舗程度のネットワークを作る必要があるわけで、来年中に到達するであろう200店舗ではまだ十分ではないということになる。
 また北カリフォルニアにも物流センターを建造中で、サクラメント商圏ですでに建設予定地を20カ所程度手当てしており、とするとここでも300店舗程度の店舗網が必要となり、トータルすると西海岸だけで当初から600を越える店舗数を想定していることになる。
 テスコによる公表数値を元に試算すると現在一店舗あたり平均570万ドルを売り上げており、仮に600店舗を持つと単純計算で年商34億ドルとなる。日本円にすると3,000億円超で、つまりこの規模のチェーンストアを数年間で作ってしまうことをテスコは当初から目論んでいることになるのである。
 同じ言語圏ではあるものの、ヨーロッパとアメリカは文化を異にしており、例えばH&Mですら多店舗展開するまで数年の勉強期間を置いているほどである。テスコにとってアメリカは外国であり、この外国において数年間で30億ドルを超えるチェーンストアを作ってしまうプランを持っているテスコという企業には、やはり驚かざるを得ない。
 今後の課題は、現時点で考えられる究極の効率オペレーションを実現している一方で、その副作用としての店内の賑やかさの欠落にあるだろう。ワクワク感がほとんどない無機質な空間となっており、これに気づいて修正をかけてはいるのだが、クリアするには至っていない。
 もう一つは当然のことではあるのだが、そろそろ店舗ごとにオペレーションレベルのバラツキが出てきている点である。欠品、陳列の乱れ、クレンリネスの非徹底など、レベルの低い店が登場し始めている。徹底的な本部集中管理型の仕組みを構築しているのだが、それでも店長の力量が店舗レベルを左右するという、非常にわかりやすい好例となっている。
 こういった課題をクリアすることによる底上げがなければ、規模だけとなってしまい、儲かる事業にはならないだろう。

★現場主義テスコのDNA★
 100店舗目のオープニングで、米国事業のCEOで本体の取締役でもあるティム・メイソンが、オープニングに先立っての内覧会でスピーチを行い、また店内でテレビのライブ放映の取材を受けるなどメディアの取材を積極的に受けていた。1号店オープニング時にはなかったことで、ようやく幹部が米国メディアに顔を出す余裕が出てきたようだ。
 このセレモニーのあと、メイソンはレジに立って接客し、その後は各店員に話しかけ励まして回っていた。
 テスコはイオンの2倍の売上高を誇る。このテスコ本体の取締役が売場に立つと言うことは、イオンの社長が売場に立つよりも価値があるかもしれない。
 フレッシュ&イージーはまだ不透明な部分が多いのだが、トップの現場主義を目撃するに、少なくとも簡単に崩れるようなことはないだろうと感じるのである。

鈴木敏仁 (02:43)
ペプシネックス



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