2009年1月19日
「成長に拍車がかかりはじめた米アルディ」Vol.13,No.04

アメリカ流通eニュース

 昨年来、アルディの出店スピードが加速してきているのだが、ついにニューヨークへの出店をほのめかしたため一般メディアの耳目を集めはじめた。ウォールストリートジャーナルが特集で取り上げているのだが、私の記憶では全国紙による記事は初めてではないかと思う。
 グローバルという視点で見たときに、おそらく、ウォルマートとテスコの2社に次いでベンチマークすべき企業がこのアルディだろう。
 ご存じない方も多いと思うので、アメリカでの現状を中心にしてこの企業について簡単にまとめておこうと思う。

 ドイツに本社を置く非上場企業である。上場していないという理由と、企業ポリシーとして事業内容について一切公言しないため、何をしているのかということについてほとんど知られていない。
 詳しい歴史は省くが、60年代に創業家の兄弟が枝分かれして、北アルディと南アルディの2社に分離している。資本関係は全くないのだが、PBデザインを統一したり、出店地域をバッティングさせないなど協調関係にあり、一般人にとっては同一資本と見えるユニークな企業である。
 ドイツ国内には、北アルディが2400店舗、南アルディが1720店舗を展開しているのだが、これとほぼ同程度の店舗数を国外でも展開していて、グローバルでは8000店舗を越えている。海外も北と南は重ならないように進出国家を分けている。
 業態としての特徴をまとめると、こうなる。
 店舗面積は300縲鰀500坪、アイテム数は700縲鰀1000程度、店内環境は徹底的なノーフリル、短い営業時間、1skuをパレット陳列、生鮮は若干そろえる、PB比率は95%、価格戦略はEDLP、といったところである。
 業態名は、巷間言われるのがハードディスカウント、またアイテム数を絞ることから、別名リミテッドアソートメントストアとも呼ばれる。
 南アルディによるアメリカ進出は1976年と、実に30年以上前のことである。また北アルディは1979年にトレーダージョーズの買収によって進出している。後者はアルディが経営に参画しないことを条件としており、純粋な資本進出である。
 北と南を合わせてアルディグループとするならば、実はこの二つを合算すると米スーパーマーケットランキングで10位前後となる。この点についてはあまり知られていない。
 南アルディの出店数が加速してきたのは、このほんの数年である。新店数は2007年に65店舗、2008年が100店舗、年間70縲鰀100店舗を開店させることを中期計画としている。昨年末に1000店舗を突破し、今年の予定は75店舗だ。
 出店地域は中西部から北東部中心で、今年初めてフロリダ州に進出、またテキサスに配送センターを建設中で来年中にはウォルマートの地元にも攻め込む予定となっている。
 ここに来て勢いがつき始めた理由の一つは景気の悪化であろう。超低価格業態は不景気が追い風なのである。また規模が大きくなって注目を浴び始めたことも理由かもしれない。この企業の強さでもあり弱点でもあるのはマスメディアでの広告を拒否していることで、知名度が非常に低い点にある。マスコミが勝手に騒ぎ始めたので、その宣伝に乗り始めている感が強い。

★非伝統的な小売モデル★
 このビジネスモデルの本質的なおもしろさとは、いわゆる一般的な小売セオリーとは異なるアンチテーゼ的なところにある。つまり、品揃えは拡大し、値下げしてチラシを打ち、店内ではPOPや飾りを一杯つけ、営業時間は長くして、人的サービスを強化し、等々の常識的な運営手法を取っていない点である。
 アンチテーゼによって、通常の小売モデルとは決定的に異なる経費構造を実現し、超低価格を提供してお客に支持されているというわけである。
 米アルディの2008年の売上高は、対前年比21%増の推定70億ドルに達する見込み。ウォルマートにとっての手強い競合が成長しつつあるようだ。

鈴木敏仁 (04:06)
ペプシネックス



R2Link QR Code
R2Linkを携帯で!



バックナンバー

最近のトラックバック

2021年1月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            



ソリューションを売れ!
ソリューションを売れ!


Twitter

このブログのフィードを取得
[フィードとは]