米国において、異業種異業態企業を持ち株会社の傘下に複数糾合させる経営形態であるコングロマリット(以降コングロ)がブームとなったのは、60年代後半のことであった。同業種内のM&Aに対して独占禁止法上の制約があるのに対し、異業種異業態であればたやすく吸収して企業サイズを大きくすることができたからである。
機関投資家による投資もこの時期コングロに集中した。異業種間のシナジー効果によって一株あたりの株価が上昇するという理由からだったのだが、しかし異業種間にシナジーが効果的にはたらくケースはまれで、結局ほとんどのコングロは当初の目論見どおりにはいかなかった。
70年代後半には、対象企業を担保として大幅な借入金に依存し、レバレッジをきかせて企業を買収するバイアウト手法が確立し、コングロの傘にぶら下がる業績が冴えない異業種企業をバイアウト企業に売却するケースが増え、結局コングロの多くは解体された。現時点においてコングロ経営で成功例として上げられるのは、ゼネラル・エレクトリックとバークシャー・ハザウェイくらいなものである。
流通業界においてもコングロ型はごく一般的な経営手法としてかなり早い時期に定着したのだが、異業種を巻き込む純粋なタイプはやはり失敗例が多い。例えばシアーズは70年代後半に典型的な多角化に突き進み始め、保険や不動産など純粋な異業種コングロを形成、しかし結局十分なシナジー効果を出せず、本業も傾き、90年代に入ってすべてを売却するにいたっている。
一方同業内の異業態でコングロ化をはかったのがKマートであった。80年のファーズ・カフェテリア(レストランチェーン)、84年のウォルデンブック(書籍)とビルダーズ・スクェア(ハードウェア)、85年のペイレスドラッグ(Dgs)と、80年代に急速に拡大したのだが、本体の業績が90年代に悪化し、こちらもご存知の通り解体の憂き目にあい、さらに本体が倒産するにいたっている。
コングロ経営失敗の後に、傾いた両社が合併したのは何かの因果かもしれない。
このように、コングロ型経営方式は少なくとも米国においては必ずしも成功を約束するものではないのだが、一方日本のとりわけ流通業界では、セブン&アイやイオンに代表されるようにコングロ型が目に付くし、純粋持ち株会社方式の普及によってますます増えそうな気配が濃厚だ。
この経営手法のメリットとデメリットを、米国の事例をたたき台として検証してみよう。
<続きは販売革新06年2月号をご覧下さい>
最近のトラックバック
from 英語新聞ウォールストリートジャーナル(WSJ)から見た起業・ビジネスのヒント
from 英語新聞ウォールストリートジャーナル(WSJ)から見た起業・ビジネスのヒント
from デジタルな広告たち
from ファッション流通ブログde業界関心事
from ファッション流通ブログde業界関心事
from kitten using XOOPS
from 行け行け!LAビジネスウォッチャーズ
from kitten using XOOPS