2011年1月31日
「JCペニーが双方向型のネット端末を120店舗に導入」Vol.15,No.05

アメリカ流通eニュース

 デジタルサイネージ(またはインストアTV)がアメリカで普及しない理由は昨年書いた。人間がPOPを眺める時間は10秒程度が限界で、この10秒間でメッセージを伝えきれる効果的なコンテンツがいまだ作られていないからである。業界では、まだしばらく時間がかかるだろうと見られている。
 つまり現時点においては、デジタルPOPとしての効果はあまりないとみるのが正しい。
 インストアTVにはもう一つ、広告としての機能もある。新聞や雑誌の広告のようにブランドを販促するメディアとしての役割である。この場合、通りすがりにそのメディアを眺める人の数が重要なのだが、アメリカのように人口が希薄で来店人数もそれほど多くない環境においては店舗内の広告メディアの効果は低く、インフラへの投資コストを勘案すると意味がないのだろう。
 つまりいずれにしてもアメリカにおいてはインストアTVを店内に導入する価値が低いのである。だから普及しないというわけだ。
 一方このデジタル広告としの機能にのみ注目するならば、日本の小売店舗の店内に導入する価値はあるのかもしれない。コンビニで店の外側に向けてテレビを設置したり、買い物が終わったレジまわりにテレビを置くのも、単なる広告メディアとして考えるならば悪くはない。ただしスポンサーがどこまで価値を見出すかにもよるだろうが。


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鈴木敏仁 (09:06)


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2011年1月28日
[ウォルマート] 今年のカナダへの設備投資は5億ドル

昨日のWSJ誌がウォルマートのカナダでの新店予定や他企業の計画をひいて、アメリカの小売企業がカナダを強化しているという記事を掲載していました。


ウォルマートの今年度の予定設備投資額は5億ドルで、スーパーセンターの新店数は40店舗、ただしそのうちの32店舗は既存店の改装かリロケーションとなる。

タンガー・ファクトリーアウトレットが今後5~7年間で10億ドルを投じてアウトレットを15ヶ所建設する。

また先日エントリーしたターゲットの進出や、その他、TJマックスやJクルーもカナダ進出を検討している。


とったことから、米国小売企業にとってカナダはいま熱い、という論旨を展開していました。


ただ、ウォルマートは昨年もスーパーセンターを40店舗開店させていますし(同じくほとんどが改装かリロケーション)、米国企業が急にカナダに興味を持ち始めたと言うわけでもありません。
多くの米国小売企業がすでにカナダで店舗を展開していますしね。


カナダの国民一人当たりショッピングセンターの面積はアメリカの3分の2程度に過ぎなくて、ポテンシャルは大きい。土地コストも安いし、なんといってもアメリカや日本のような経済が悪化していなくて比較的安定している。
でも人口密度が希薄で、総人口も少ないですし、美味しいばかりというわけでもないんです。


実はアメリカの小売業界にどっぷり浸かっている私のような人間からすると、カナダは実におもしろい。店舗環境が、微妙に違い、微妙に似ている。この差異が新鮮なんですね。
一度行かれることをお勧めします。
私も今年は何回か行くことになりそうです。

鈴木敏仁 (11:44)


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2011年1月27日
[ロウズ] 1,700人の中間管理層をレイオフ

ロウズが1,700人のレイオフを発表しました。
店舗の組織構造を見直し、中間管理層を減らすため、としています。
また週末にパートタイマーの雇用を増やすとも書いてあり、これはおそらくピーク時もフルタイマーでまかなっていたものをパートタイマーで補うことを目的としているのでしょう。

アメリカの住宅環境はいまだ回復の二文字からほど遠く、ホームセンターはそのあおりをまともに受けて業績もなかなか良くなりません。
この状況に対処するためにロウズはいま経費構造の見直しを実施していまして、その一貫としてこのレイオフが実施されたというわけです。


こういう組織変更とレイオフは、アメリカの小売業界では今や日常茶飯事なので珍しいことではありません。幸か不幸か人材の横のフローが硬直化している日本のレイバー環境と比較すると対照的だなといつも思います。

鈴木敏仁 (03:24)


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2011年1月26日
[ウォルマート] 低価格指向への回帰姿勢を鮮明に

ウォルマートがサプライヤーに対して、オープニングプライスポイント強化の姿勢を鮮明に打ち出したようです。New York Postが報じています。

オープニングプライスポイント(略称OPP)とはアメリカの業界用語で、カテゴリー内(または品種)でもっとも低い価格帯のことを言います。

拙著でも書いたことなのですが、ウォルマートは歴史的にOPP重視で、元CEOのデイビッド・グラスはダラーストアを強敵とみなしてOPP強化を最優先としていました。

この姿勢が業務改革後薄れたんですね。
ところが昨年の方針転換で昔に戻った。

戻っただけではなく、サプライヤーいわくかつてなく強い姿勢を打ち出している、と紙面にはあります。
OPP商品を持っていないサプライヤーは去ってくれ、ぐらいの姿勢らしい。


まあ要するに、原点へ戻る姿勢を強烈に打ち出しているということなのでしょう。
一度ある方向へ向かうと、大企業ですから軌道を戻すには大変な労力が必要となる。だから、幹部が非常に強い姿勢を示すことで軌道の修正を図ろうとしているのだろうと、私は理解しました。


やっぱり、これがウォルマートなんだだと私は思います。

ところで昨日書いたアマゾンの件、完全無料ではなくやはり最低購買量というものがあるようです。
勘違いしたようで、何を買っても配送料がかかる、ではなく、無料になるオプションもある、というシステムをいま開発中ということなんですね。

ご指摘いただきましたYさん、ありがとうございました!


トゥイッターR2Link

鈴木敏仁 (04:14)


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2011年1月25日
[JCペニー] アクティビスト投資家を外部取締役に選任

アクティビスト型の投資家ウィリアム・アックマンと、REITのヴォーネ=ド・リアルティ・トラストのスティーブ・ロスを外部取締役として選任することを蹴ってしました。来月末頃に就任予定。

昨年末、アックマンのパーシングスクエア社が16.5%、ヴォーネードが9.9%の株式を取得して大株主となっていることが公となり、紙面を賑わしました。アックマンの次の標的はJCペニーか、と。

アックマンが大株主に、今回の目的は何?

この後、ペニーはポイゾンピルを導入、10%以上の株の取得を難しくしています。このあたりで、ペニーはこの二者と協調し始めていることが見えていました。

そして今回の取締役就任でこれが明らかになったというわけです。


前回書いたとおりヴォーネードはペニーが入っているショッピングセンターの大家ですから、おそらく不動産資産のリストラが目的なのでしょうね。

ペニーはすでに不採算店舗5ヶ所の撤退を決めていて、さらに今後はアウトレット19店舗、コールセンター2ヶ所の閉鎖などを予定しており、リストラはすでに開始しています。
これをヴォーネードが手助けすると言うことになるのかもしれません。


ターゲットの大株主だったアックマンが取締役の席を求めて委任状争奪戦を仕掛けたのは一昨年のことでした。
バーンズ&ノーブルでも最近同じようなことが起こってます。

普通は拒否反応を示すものだと思うのですが、ペニーのように受け入れるという姿勢もあるんですね。
大手REITと手を組んでいるのが功を奏しているのかもしれないなと考えてます。アックマンが考え出した戦略なのかもしれません。

鈴木敏仁 (03:59)


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2011年1月24日
[アマゾン] 配送料フリーのネットスーパーを開発中

アマゾンが生鮮のネット販売の実験を開始したのは2007年のことでした。シアトルの本社近辺から小さくスタート、その後こつこつとシステムを組み上げ少しずつ商圏を拡大、まだシアトル周辺から外側には進出していないのですが、しかし確実に版図を広げつつあります。

実験を開始したときのエントリーがこれです。
アマゾン生鮮のテスト開始

その成否につき意見は真っ二つでしたが、いまだアマゾンは取り組んでいます。

現在開発しているのがフリーデリバリー。

・配送料が有料と無料の商品がある
・配送日は固定、週に二回、地域によって異なる
・会員制ではなくて完全無料、最低発注量などもない
・配達時間は固定、朝6時以前、7~10時、10~13時、15~18時、18~21時、の5つから選択する

この4つの制限に従えば、配送料無料で生鮮食料品を買えるというわけです。


新聞配達みたいなものかなと私は理解したのですが、どうでしょうね。


いまだシアトルエリアに限られているのですが、アマゾンは食品でも徐々にビジネスを構築しつつあるということを、この話を知って確認しました。

鈴木敏仁 (09:15)


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2011年1月24日
「販促効果が薄れたアメリカ市場」Vol.15,No.04

アメリカ流通eニュース

 1月の大手各社の業績はほとんどが予測を超える数値を残し、歳末から引き続きアメリカの消費はプラスとなって、景気が回復してきたような印象となっている。歳末直後の1月の消費傾向はその後を占うバロメーターとしてあまり機能しないと言われてはいるのだが、明るい材料として紙面を踊った。
 この消費について、一つ面白い調査結果があるのでここで紹介しようと思う。ここ数年続いた値下げ販促に消費者は飽きてしまっていて、効果がかなり薄れているという話である。
 つまりいま消費は、メーカーや小売企業による売上増を狙う意図的な販促とはまったく異なるところで動いているというわけなのである。(調査はSymphonyIRIによる)

*****

 アメリカは値下げクーポンをよく利用する文化を持っていて、これがベンチマークされることが多いのだが、昨年のクーポンの償還額は過去最高を記録したものの、上半期から下半期までの推移を見ると20億ドルから17億ドルへと15%もダウンしており、クーポン効果が明らかに減じているようだ。
 店頭の価格販促については、30%以上の商品がなんらかの価格販促を実施しているカテゴリーが全体の60%から70%へと増えていて、販促は明らかに増えている。しかしながら、一回の販促企画による売上増の効果は57%も減っているのである。販促商品は増えているが、企画毎による売上成長率が減っていると言うことは、価格販促による効果は水のように薄まってきているということを意味している。
 この事実を象徴しているのが、昨年前半のウォルマートによる値下げキャンペーンだろう。プロジェクトインパクトの既存店に対する効果が思うように上がらないため、いわば起死回生の一発として大掛かりな価格販促を実施したのだが、効果はなかった。
 この販促、メーカーの支援を受けず自腹で実施したため、失敗の痛手は大きかった。直後に、米国ウォルマート事業の責任者が更迭、マーチャンダイジングの責任者が辞職したのも、その影響の大きさを物語っている。
 また業態の本質として値下げというものを本来しないのがMWCなのだが、ここ数年クーポンを増やしてきたのがコストコで、ところが情報筋からの話として、このクーポンの効果がどんどん薄れてきているのだという。
 分かりやすいのがP&Gだ。12月に石けんや洗剤といった定番商品の売上が減ったのだが、価格販促企画を減らしたのにもかかわらず1月には売上が戻ってきているそうだ。つまり、販促企画とは別のところで売上が増減しているというわけである。
 考えられることは、消費者が価格販促慣れしてしまったということ、値下げしたところで買いだめする余裕が今のアメリカの消費者にはまだ無いということの2つである。調査は後者を理由として採用している。
 ウォルマートは昨年半ばから基本に立ち返るということで、EDLPへの回帰を宣言している。この原点回帰戦略、消費者が価格販促に反応しないという消費状況を鑑みるにまったく正しいということができる。そういう意味でウォルマートの動きは実に早い。

◇いつか飽きられるプロモーション◇
 この調査はさらに、グルーポンにも言及している。150社への調査では32%が儲けが出ず、とくに外食は42%が無駄に終わっていると回答しているそうだ。クーポン以上に出費しない、一回来店するだけで戻ってこない、といった理由が添えられている。またクーポンの発行当初よりも、時間が経つにつれて効果が薄れて行くという結果もすでに出ている。
 要は飽きられてしまうというわけだ。
 さらに今はメールやソーシャルサイトなど、消費者が価格販促メッセージに触れる機会が以前よりも飛躍的に増え、これも効果を減ずるに一役買っている。
 ハイローは麻薬で一回はじめるとやめられなくなる。景気の悪化という環境の変化によって強い麻薬を打ち始めたのだが、薬慣れしてしまってその強い麻薬も効かなくなってしまったといことだ。
 価格販促とは結局そういうものなのである。とりわけどっぷり浸かっている日本のメーカーと小売企業は、この話をじっくり考える必要があると思っている。

鈴木敏仁 (09:01)


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2011年1月21日
[ウェッグマンズ] 働きたい企業ベスト100ランキングで再び3位に

毎年恒例となっているフォーチュン誌による100 Best Companies to Work Forが発表されました。昨年に引き続きウェッグマンズが3位に入賞、5位以内のランクインは7年連続、100社以内は14年連続です。

100位までの小売企業をざっと抜粋してみましたが、今年は12社がランクイン。昨年の9社よりも3社増えてます。

3位:ウェッグマンズ
6位:ザッポス
8位:ナゲットマーケット
18位:スチュー・レオナルド
21位:コンテナストア
24位:ホールフーズ
34位:クィック・トリップ
48位:ビルダベア
67位:パブリックス
73位:ノードストロム
87位:メンズ・ウェアハウス
94位:エアロポステール

昨年も書いていることで新味がないですが、このランキングを見るたびに、日本でこれを作ったら小売企業は何社ランクインするんだろうと考えてしまいます。

しかしウェッグマンズという企業、凄いですね・・・


参考までにこちらが昨年のエントリーです。
[ウェッグマンズ] 働きたい企業ベスト100ランキング、6年連続でトップ5入り

鈴木敏仁 (03:11)


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2011年1月20日
[ウォルマート] 加工食品のヘルシー化イニシアチブを発表

販売している加工食品をヘルシーなものにするという非常に興味深いイニシアチブを発表しました。

1、使用されている塩分を25%減らす
2、乳製品、ソース、フルーツ飲料から糖分を10%減らす
3、トランス脂肪酸をなくす

・ターゲットは2015年、まずはプライベートブランドから取り組み、同時にナショナルブランドメーカーには取り組みを要請する。
・必ず実現できる現実的な内容だが、現状においてはどう取り組むかといった具体的なプランは見えていない。

他にも項目があるのですが、割愛します。


どうも、マイケル・デュークがオバマ大統領と会談を持ったときに、ファーストレディのミッシェル・オバマから要請があって、ウォルマートが本腰を入れ始めたといういきさつがあるようです。


塩分や糖分って中毒性があって、やめられなくなりますから、だから味が濃くなっているわけですよね。
減らすとこの効果が無くなりますから、売る側にとってはリスキーでしょう、おそらく。ひょっとすると何か別の添加物を使って味をごまかすのだろうかなんてつまらないことを考えてしまいます。


とにかくここで理解できることは、サステナビリティ、農業支援、そしてこの加工食品のヘルシー化と、ウォルマートが業界のリーダシップを取っていて、競合小売企業やメーカーにどんどん先駆けてしてまっているというこじゃないかと思います。

鈴木敏仁 (03:44)


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2011年1月19日
[スターバックス] 非接触型の決済システムを全店舗に導入

スターバックスが一部の店のみで実験していた非接触型の決済システムを全店舗に導入することを発表しました。

仕組みは日本のようなRFIDを利用したものではありません。
スタバが発行しているプリペイドカードがまず必要でして、加えてスマートフォンのアプリをダウンロード、プリペイドカードとアプリを同期させ、このアプリを起動すると出てくる三次元バーコードをスキャナーで読み込むことで支払いが完了するという仕組みです。

プリペイドカードはオンラインで管理可能、もちろん店頭で入金することができるのですが、ネットでクレジットカードを登録すると一定金額以下になると自動で入金できる仕組みもあります。

決済システムについて深く知っているわけではないのですが、RFID使用と比較すると、スマートフォン自体にRFIDを組み込む必要がないという点でこの決済システムの方が楽なのかもしれませんね。


アメリカは非接触型の決済システム導入で非常に遅れていて、ガラパゴス化していると思ってます。日本やヨーロッパにかなりの差をつけられてしまっている。
私の知っている限り非接触型はこのスタバのシステムが唯一で、他にはどこにもないと思います。

もちろん電子マネーなんて存在しません、この国には。


理由はどうもクレジットカード会社にあるように感じてるんですけどね。二社独占で儲かってますから、新たな投資に対するモチベーションが低いんじゃなかろうかと。
マニュアルな手書きのサインをよりどころとするクレジットカードはリスクもそれなりに高いんですが、そのリスク分を手数料でまかなってしまってる。

こと決済についていうとアメリカは極めてレベルの低い国でして、そういう意味でスタバのこの全店舗水平展開は価値のあることじゃないかなと思いますね。
こういうシステムがもっと普及して、クレジット決済が減って手数料収入が減れば、クレジット会社も焦り始めるんじゃないでしょうか。

鈴木敏仁 (02:45)


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2011年1月18日
[ウォルグリーン] 新ポジションの新設とそのユニークさ

ウォルグリーンが役員クラスの新人事を実施したのですが、新たに設置された新ポジションの役割と、就任する人の前歴が非常にユニークです。

部門の名称はカスタマー・エクスペリアンスで、就任する人の肩書きはチーフ・カスタマー・エクスペリアンス・オフィサー。シニアバイスプレジデント(上級副社長)で上司はCEOのグレッグ・ワッソンなので、大きめの部署ということになります。

そしてここに就任する人の前歴が、ユナイテッド航空のマイレッジプラスの責任者なんですね。

マイレッジプラスということは、つまりこの部署の機能はロイヤルティプログラムということになるわけですが、さらに"お客の経験"というものを強化することを目的としていると書いてあります。


私がおもしろいなと感じたのは次の三点。

一つ目はウォルグリーンがロイヤルティマーケティングを始めるということ。私は知りませんでした。どこかの資料で読んだような、読んだこと無いような、というレベル。CVSはすでにかなり成果を収めていて、ライトエイドが現在トライしていて、3番目の参入となりますね。

二つ目はユナイテッドから人を引っ張ってきたということ。こういう人事は日本ではちょっと想像できない。

三つ目はその名称。ロイヤルティ・プログラムを担当する部署にこういう部門名をつけるセンスが非常に良い。また"お客の経験"という部門名は、直接そのままというのは無理だからなにかもうちょっとひねった名称を考えたとしても、日本の小売業界の部署名としては想定しづらい。


特に二つ目と三つ目が重要ですね。組織を柔軟に維持しようとしたら、こういう人事や組織政策は不可欠でしょう。
過去の風習に囚われたガチガチの組織体制だとこういう発想は出てこない。
日本の大手小売企業ではまず難しいような気がするし、そう考えると大企業ウォルグリーンもなかなかおもしろいなと思います。
変わろうと努力しているのかも知れませんね。


ちなみにウォルマートにも、CEO直轄ではなくて店舗オペレーションの中ですが、似たような名称の部門があるはずです。

鈴木敏仁 (04:18)


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2011年1月17日
「アマゾンが取得した"返品を減らすパテント"とは?」Vol.15,No.03

アメリカ流通eニュース

 1月末に発表されたアマゾンの第4四半期の売上高は129億5000万ドルであった。四半期ベースで初の100億ドル超えを達成し、同社にとってきわめて大きなマイルストーンを超えた年になった。通年の売上高は342億ドルで、昨年対比で40%増、この売上高規模で40%も成長するというのは並大抵ではない。
 これを書いている時点でのアマゾンの株価の市場総額は828億ドル、競合のボーダーズ、バーンズ&ノーブル、ブックスアミリオンの三社合計数値の18億ドルの実に46倍に達している。この数値を見る限り、金融市場の評価という観点ではすでに勝負はついてしまっているとしか言いようがない。
 アマゾンが成長している理由はたくさんあげることができるだろうが、一つはネットを起点としつつ新たな市場と仕組み作りに余念がないということを指摘できる。とにかく新しいイニシアチブがどんどん出てきて追いつくのが大変なほどだ。
 今回はその中からあまり知られていない好例を紹介する。


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鈴木敏仁 (08:47)


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2011年1月14日
[ターゲット] カナダへの進出を決定

ターゲットがカナダへの進出を決めました。
デパートメントストアのハドソンズベイがディスカウント型のゼラーズというチェーンストアを所有しているのですが、これのリースを買い取ることで合意しました。買収金額は18億5,000米ドル。

リースを買うという通常とは異なる買収で、資料を読むにちょっと分かりづらいところがあるのですが・・・。・

契約がカバーするのは276店舗中の220店舗。
ターゲットアは今年中はリースを支払う。
ゼラーズはしばらくは営業を継続し、ターゲットからサブリースする。
ターゲットは2013~2014年までに100~150店舗をカナダに出店する。
最終的には200~240店舗体制を目指す。


"しばらくは営業を続ける"となっていて、このしばらくがどの程度なのかが不明です。
徐々にターゲットに変えていくということなんでしょうね。
また220ヶ所を買って、100から150店舗を出店すると言っているので、残りのロケーションはターゲットが売却すると言うことになるのでしょう。


ターゲットとゼラーズは2006年頃からディールについて話し合っていたようです。

ターゲットの食品売場"Pフレッシュ"はゼラーズの食品売場"ザ・ネイバーフッド・マーケット"そっくりで、ターゲットはゼラーズからアイディアを借用したのではないかというのがもっぱらの見方なんですね。

両社はわりと近い関係にあったということになります。


ちなみにウォルマートはカナダにすでに300店舗以上を展開しています。

もう一つちなみに、ゼラーズの親会社のハドソンズ・ベイは創業1670年で北米最古の企業、所有していた土地がほぼ今のカナダ全域に匹敵し、テキサス州の10倍、事実上の国家として機能していたそうです・・・ということを今知りました。


トゥイッターR2Link

鈴木敏仁 (03:12)


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2011年1月13日
[ウォルグリーン] ミッションは"みんなのマイ・ウォルグリーンになること"

ウォルグリーンが株主総会を開催しました。
まずは昨年の総括です。

・7000店舗目をオープン
・デュエイン・リードを買収
・7億7,800万枚の処方せんを調剤、昨年対比で7.5%増、これは全米総調剤枚数の5分の1に当たる
・インフルエンザ予防接種は約700万投与、民間最大規模となった。

「今我々はパラダイムシフトのまっただ中にいる。最終的なゴールは、コミュニティに根ざしたヘルスサービスと毎日のコンビニエンスな商品を提供する、全米ナンバーワンの便利なディスティネーションになることだ」

「我々のビジョンとは、すべてのアメリカ人にとってのマイ・ウォルグリーンになることだ」

CEOのグレッグ・ワッソンのコメントを、ちょっとカタカナが多いですが意訳しました。

[CVSケアマーク] 老人保健向けの調剤プロセスサービス事業を買収
ここで書いたとおりウォルグリーンとCVSは微妙に方向性が異なっているのですが、このコメントを読めばその違いがよく分かるというものです。
ウォルグリーンはそのミッションをあくまでも対消費者においているというわけです。


また一つ気になっているのが同社が取り組んでいるイニシアチブ、カスタマー・セントリック・リテーリング(略称はCCR)の状況なのですが、改装フォーマットは現在2,100店舗まで増えていて、次年度には5,500店舗となって全体と73%になるだろう、としています。

つまり今のところ順調に推移しているということのようなのですが、私が昨年後半あたりに関係者から聞いたところではあまりうまくいってないようでなんですね。
マーチャンダイジングに関しては、ウォルマートのプロジェクトインパクトのほぼコピーのような手法なので、ちょっと気になってます。

業績は決して悪くなっていないので、微調整し改善しながら進めているのかもしれませんね。

鈴木敏仁 (04:13)


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2011年1月12日
[ウォルマート] ブラジルでEDLPを導入

先週の6日付けで、ウォルマートがブラジルでEDLPを導入したようです。

まず2000アイテムを20%近く値下げし固定、その後も数ヶ月間をかけて下げていく。
資料を読んだ限りにおいては、"この価格を長期間にわたって固定する"となっています。

この期間がどの程度なのかよく分からず、EDLPと言っても本格的なものではない可能性もあるんですが、サプライヤーと契約の交渉をしたり、ロイヤルティカードを昨年末でやめたり、といったことも書いてあるので、アメリカにかなり近いものになるような印象ではあります。

事業責任者のマルコス・サマンハのコメント。
"EDLPは世界中でウォルマートが競合企業と差別化としている戦略だ。ビジネス哲学であり、世界中で成功しているやり方だ。これからさらに安く仕入れてこれを価格に反映させ、長くその価格を維持してお客のベネフィットにつなげる"

EDLPはウォルマートのビジネス哲学なんですよね。
ウォルマートのEDLPの価値は、分かる人には分かると思います。


あとは仕入れ原価を一定にしてしまうEDLCがあれば完璧なんですが、ブラジルでここはどうなんでしょうね。
EDLCはEDLPよりもハードルが高いのです。

鈴木敏仁 (12:24)


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2011年1月11日
年末2ヶ月間の売上高成長率は4%

11月~12月にかけての売上高は4%増、客数は1.8%増だった、という歳末商戦のもう一つの数値が出ました。出所はShopperTrak。
天候不順が12月の売上高に悪影響を及ぼしたが11月の好調が全体を押し上げた、2006年以来の最高のホリデーシーズンだったと言ってよいだろう、としてます。

予測を若干下回ったことを理由としてアメリカのメディアは当初ネガティブな論調でした。
これをそのまま伝えている日本のメジャーなメディアがあったんですが、まあ、通訳しているだけだからそれはそれでいいんでしょうけど、続報もちゃんとフォローしていかないと、間違った情報を日本に伝えることになりますよね。

3%以上も伸びたんだから、消費環境が良くないとは言えないだろうとずっと感じてたんですが、今回のニュースでやっぱりそうだよねと、一安心しました。

そういうことで、ここ数年ずっと悪かったアメリカの小売環境ですが、かなり回復したと判断して良いようです。

鈴木敏仁 (01:53)


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2011年1月10日
[ファイブビロウ] シカゴへ進出、中西部進出の足がかりへ

ファイブビロウがシカゴへ進出します。1店舗目のオープンは今春で、その後20店舗まで増やして市場の受け入れ状況をモニターする。今後3~5年で60店舗体制に持って行くことが目標だそうです。

ついでに今年の出店予定は60店舗です。

この企業については一昨年にエントリーしてます。
成長に拍車がかかった新フォーマット

この企業、成長し始めたばかりの非上場企業で情報があまりないのですが、サイト情報では店舗数は140店舗以上となっていて、2年で約40店舗が増えてます。今年は60店舗ですから、少しずつ新規出店数が増えているんじゃないでしょうかね。

非常にユニークなフォーマットでして、あまり知られてませんが私は注目しています。

鈴木敏仁 (02:43)


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2011年1月10日
ウォルグリーンが新設する新たな部門の意義

アメリカ流通eニュース

 ウォルグリーンが株主総会を開催し昨年の総括と今後の方針を説明した。
「我々のビジョンとは、すべてのアメリカ人にとってのマイ・ウォルグリーンになることだ」これはCEOのグレッグ・ワッソンのコメントである。店舗数は7,600を超え、全米で処方される調剤枚数の25%を占め、アメリカ人の63%がウォルグリーン店舗から3マイル(4.8キロ)圏内に住んでいるという、大きな規模とネットワークを前提とした発言だ。
 例えば、ショッピングセンター内でスーパーマーケットと共存する旧来のやり方の限界を見通してフリースタンディング型とし、さらにドライブスルーを開発するなど、現在のデファクトスタンダードになってしまったとも言えるタイプで業界に先駆けたのがウォルグリーンだ。大企業にもかかわらず変化が早い。
 ところが一方で、意志決定が遅いなど大企業特有の特徴も兼ね備えていて、この企業が持っている社風は極めて興味深い。
 この大企業が景気の悪化をきっかけとして業革に取り組み、いままさに変革の真っ最中である。古くからいた役員クラスの多くがやめ、その代わり外部からの人材を投入するという、ほとんど総入れ替えに近い組織改革も実施している。
 そのような環境の中で、これまた興味深い新しいポジションが新設された。


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鈴木敏仁 (08:36)


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2011年1月 7日
戻ってきたアメリカ人の消費意欲

歳末商戦のおおよその数値が出揃いました。

○12月の既存店成長率は3.1%、予測は3.4%
(トムソン・ロイターズ、大手28社)

○11月と12月の売上高成長率は3.8%
(国際ショッピングセンター協議会)

○12月のネット販売の成長率は12%
(コムソース)

予測を下回ったのでネガティブな意見が多いのですが、とりあえず3%強の数値を残せたので、まあまあだったんじゃないでしょうか。

下回った原因としては、東海岸の寒波、西海岸の長雨に加えて、今年は販促が早くから始まって買い物が11月に前倒しされたことも理由として挙げられています。


ちなみに12月の既存店がマイナスだったのは、エアロポステール、アメリカンイーグル、ギャップ、ホットトピック、ウェットシールなどアパレル専門店ばかり、過剰な価格販促が理由として指摘されてます。

またちょっと気になるのがベストバイのマイナス5%、テレビの売り上げ不振が理由として挙げられているのですが、これはおそらく昨年よく売れたのでその反動なのでしょうね。
数値的には予測の範囲内だったようではあります。


とりあえず、アメリカ人の消費は戻ってきているように思います。

鈴木敏仁 (02:29)


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2011年1月 6日
[BJ'sホールセールクラブ] 5店舗の閉鎖と500人の解雇

BJ'sは東海岸に展開しているホールセールクラブで、コストコ、サムズに次いで業界3位に位置する企業です。
まあ、MWC業態にはこの3社しかいないんですけどね。

この企業、久しく業績が良くないのですが、投資企業が買収に興味を持っていると言われていて、今回の店舗閉鎖と解雇も売却に備えてのことではないかと云うのがもっぱらの見方です。
ちなみに経営幹部も二人辞めて、マネジメント層も入れ替わりました。


同じような動きがスーパーバリュにもあります。
東海岸のショーズ5店舗と、南カリフォルニアのアルバートソンズ4店舗の売却。
こちらはショーズを売却したいようなのですが、相手が見つからないという悩みがあるようで、負債採算店舗を整理することで売りやすくしようとしているのではないかという見方ができます。


この二社、とくに前者は近いうちに大きな動きがあるんじゃないかと思います。


今日は大手小売企業各社の12月の決算が出ました。
数値を整理して明日エントリーします。

鈴木敏仁 (03:20)


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2011年1月 5日
[ダラーゼネラル] 2011年度の新店数は625店舗

ダラーゼネラルが2011年度に625店舗の新店をオープンさせる予定であることを明らかにしました。
加えてリモデルまたはリロケーションが550店舗、トータルすると1,175店舗に何らかの手が加えられるということになります。

おそらく今年度の新店数は600店舗だったはずなので、25店舗の増加ですね。


ダラーゼネラルは景気の悪化という追い風もあるのですが、新CEOの元でマネジメントが格段に向上しています。足下がしっかりしていますので、しばらく勢いは止まらないでしょう。

現在9,000店舗台でして、いつ1万店舗に到達するのか楽しみとなってきました。


トゥイッターR2Link

鈴木敏仁 (02:46)


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2011年1月 4日
[ボーダーズ] 取引先への支払い遅延と上級幹部2人の辞任

年末の31日、書籍チェーン2位のボーダーズが一部の取引先への支払いを遅延したことが報道されました。同日に株価は20%下落、4日現在は84セントでして、ほぼ死に体の株価となっています。

今日は法務責任者(general counsel)とCIOが辞任。

現在資金繰りに苦闘しているようで、週内にサプライヤーグループと話し合うようです。

同社が12月に発表した4半期決算では、赤字が二倍の7440万ドルに膨れあがり、既存店も12.6%ダウンで、業績はかなり痛んできています。


さて、どうなるんでしょうね。

以前書いたかも知れませんが、大株主は投資家のビル・アックマン、同じぐらいのシェアをビリオネアが一人で持っていて、この二人がカギを握っているようです。

いちど倒産して負債を整理して、バーンズ&ノーブルにくっつけてしまう。
またはアマゾンに買ってもらう。
または、サーキットシティのように精算してしまう。


倒産し、整理し、復活して自ら再建するというストーリーはないような気がしてます。


ちなみに上記二人の辞任ですが、理由として書いてある英語表現が面白い。
「the departures were part of its previously disclosed efforts to improve liquidity.」
"すでに開示済みの流動性を改善するため努力の一貫だ"

まあ要するに経費削減のためなんですが、"流動性改善のため"という表現は日本語ではなかなか出てきませんよね。

鈴木敏仁 (02:46)


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2011年1月 3日
[CVSケアマーク] 老人保健向けの調剤プロセスサービス事業を買収

明けましておめでとうございます。
アメリカは現在3日、今日から仕事が始まりました。日本は4日からだと思うので、まもなく仕事始めですね。
今年もよろしくお願い申し上げます。


さて年始のネタですが、当然のことながらこの数日はたいしたニュースもなく、昨年末の話を俎上に上げます。

CVSケアマークが、メディケア向けの調剤サービスを提供している事業ユニットをユニバーサル・アメリカン社という企業から買収することで合意しました。
買収総額は12億5000万ドル、小さな買収ではありません。


買収する事業はメディケアパートDの調剤に関する還付等のプロセスを請け負っていて、ケアマークとくっつけることでてこ入れを図ることが目的です。

メディケアパートDについては話が長くなるのでここではおきます。


何が書きたかったのかというと、あまりニュースにはならないのですがウォルグリーンもCVSも実は小売ビジネス以外の買収は積極的に実施しているのだということです。
買収できる中堅企業がいなくなってしまった現在、小売の買収による成長はもはや難しく、成長を続けていくためには小売以外のビジネスを伸ばしていくしかないんですね。

ただ両社、方向が若干異なっている。
ウォルグリーンは患者になんらかの医療や介護サービスを提供するビジネスを広げようとしているのに対して、CVSケアマークは当然ではありますがPBMの拡大に傾いてます。
分かりやすく言うと、前者は消費者に直接関与するビジネス、後者は上流の保険がらみのビジネス、とでもなるでしょう。


ちなみにAPによるニュースには、"ケアマークは引き続きビジネスを失っている、CVSによるケアマークの買収にはアナリストによって疑問が呈されている"、とあって、周囲の評価は相変わらず低いままとなっています。

鈴木敏仁 (11:59)


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2011年1月 3日
ホールフーズの新イニシアチブ、ヘルシーリビングVol.15,No.01

アメリカ流通eニュース

 スーパーマーケット業界で真っ先に景気悪化の直撃を受けたのが高価格帯のいわゆるグルメスーパーであった。食品は景気の影響をあまり受けないカテゴリーだが、高価格帯はやはりまず最初に敬遠されてしまう。
 大手スーパーマーケット(SM)として業績を真っ先に落としたのがホールフーズだ。もともとオーガニック専門店だったものが高価格帯のグルメ型へと転換、オーガニックをメインに据えた高級SMになってしまった。そのためがくんと業績を落としたのであった。
 奇しくも昨年の最初のこのレポートがホールフーズで、方針の転換をテーマにして書いている。具体的には、ヘルシーリビング、グルメSMから消費者のヘルシーな生活に貢献するというコンセプトへ転換したのであった。

<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>

鈴木敏仁 (11:05)


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