2009年12月30日
返品シーズンの開始

クリスマス翌日の12月28日に、「返品シーズンが始まった」というタイトルの記事がありました。あ、そう言えばそうだよねと納得する記事なのですが、アメリカの文化と流通業界を象徴しているようでおもしろいです。

アメリカ人にはレシートを付けてプレゼントをする人が多いんですね。気に入らなかったら返品して現金に換えてね、と。
この文化を反映し、金額が表示されていない返品専用のシートを、レシートと伴に発行する小売企業もいるぐらいです。

ギフトカードが普及したとは言え、まだまだ現物でプレゼントする人は多いですから。


ウォルマートなどの繁盛店は返品専用のレジをこの時期だけオープンさせたりします。


また当然のことながら盗品の返品もこの中には含まれるわけです。


NRF(全米小売業連盟)の試算によると、今年の歳末の返品にかかる総コストは27億ドル、年間では96億ドルにのぼるそう。このうちの6.4%が犯罪がらみだそうです。


日本にも"モンスターカスタマー"がいますが、総体として申し訳ないから返品はしないという文化がありますね。その分日本の流通業界では返品による負荷が相対的に低いように思います。アメリカの場合、返品に対するこの日本的な感情がないため当たり前の権利として返品しますので、どうしても増える傾向がある。

それと競合が返品を増やす、とも言われます。つまり差別化としてゆるい返品条件を提供する企業が競合が厳しいと増えるんですね。


ただここ数年、全体として返品に対しては厳しい条件を付ける方向にあるように感じてます。許容範囲を超えてしまった、ということかもしれません。


<追記>
明日の12月31日と、年始の1月1日~3日はお休みをいただきます。
また来年もごひいきに。
良いお年をお迎えください。

鈴木敏仁 (02:08)


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2009年12月29日
歳末商戦の結果、速報値は3.6%増

歳末商戦の結果に関する速報値が出ました。リソースはマスターカード、11月1日から12月24日までの売上高の前年比で、3.6%増という結果でした。
ただ今年はカレンダー上の日数が去年よりも多いこともあり、これを調整すると1%増程度としています。

あくまでも速報に過ぎないので、これをもって今年は良くなったと言うことはできないのですが、昨年がかなり悪かったのでそれよりも悪くなることはないだろうというのが大方の見方です。

また各社ともに在庫をかなり絞っているのと、その結果として過度な値下げをしていないこともあって、いずれにしても昨年のように大手各社の業績が急落することはないだろうと言われています。


大手各社が12月の数値を出すのが1月7日から、米商務省が月次の数値を発表するのが1月14日、どういう結果が出てくるのか非常に楽しみになってきました。

鈴木敏仁 (01:42)


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2009年12月28日
[リミテッド・ブランズ] 海外事業を強化、日本進出は?

リミテッド・ブランズが海外事業を強化するプランを持っていることが分かりました。今後3年間で現在の売上高10億ドルを2倍の20億ドルとすることを目標としています。

リミテッドは現在カナダにラセンザというランジェリーチェーンを展開しているのですが、バス&ボディワークスは6店舗のみ。この2つのカナダでの拡大が海外事業強化の柱となるようです。

ただ他にもパートナーを探すと書いてあって、他の国に進出するのかもしれません。
大手アパレル専門店チェーンとして、リミテッドは日本に進出していない珍しい企業なのですが、日本へ出るなんてこともあるのかもしれませんね。

鈴木敏仁 (11:56)


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2009年12月20日
時代を感じるiPhoneアプリケーション

今日はおもしろいiPhoneのアプリケーションを紹介します。名前はRedLaser、米国サイトでは有料アプリとしてしばらく1位の座にいる有名なものです。価格は1.99ドル。
日本語サイトでも購入可能なのですが、JANコードに対応していないので日本では使えません。

どういうアプリか、まずは動画をご覧ください。

以下、機能をまとめてみます。

◇高いスキャンの精度。もちろんかなり近づけないと読み取れないのですが、とにかくUPCであればまず問題はない。

◇即座に検索してネット販売で入手できるサイトを表示してくれる。

◇スキャンした商品をリストアップできる。リストをメールで送ることもできる。

◇万が一読み取れない場合のためにコードナンバーを打ち込む機能がある。


これには正直驚きました。
例えば家にあるアイテムをスキャンしておいて買い物リストを作れますね。いちいちメモに書き留める必要がなくなる。
それから買い物中にスキャンすることでネット販売との価格比較がすぐにできてしまう。
またレビューも見ることができますから、商品を買う前に評価を確認することもできる。

優れものです。
買い物という行為の根底を変えてしまいそうなポテンシャルを感じています。


当然これは一般消費者向けですが、これだけのスキャン精度があるならば、業務用も開発できるのかもしれませんよね。スキャンするとマスターデータを参照できてしまうような機能です。
iPhoneはセキュリティが甘いと言われてますが、この問題はすでに解決していると聞いてますから、不可能ではないでしょう。

JANコードに対応していないのが残念です。


日本の携帯ではQRコードを読み取る機能は一般に普及してますが、JANコードについてはあるにはあるけど普及はしていないという状況のようです。
外に開かれたiPhoneと、i-modeで内に閉じている携帯とは、こういうアプリの存在において違いが大きく出ますね。


<追記>
明日より一週間の休暇に入ります。気になるニュースはエントリーしようかと思っていますが、基本的にはお休みしますのでご了解ください。28日に戻ります。

鈴木敏仁 (12:15)


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2009年12月18日
[ユークロップス] 老舗ローカルスーパーの消滅

7月頃から噂が出ていた売却の話ですが、アホールドUSAが買収することで合意したことが分かりました。

これが噂が出ていたときのエントリーです。
老舗チェーンに売却の噂

ユークロップスの予測年商は6億ドル、店舗数は27店舗。
創業者による宗教的信条から、日曜日を休業日とし、お酒を売らない、とするユニークな企業で、地元から強い支持を得ていた企業でした。

でも、景気の悪化と大手チェーンストアの浸食で業績を落とし、創業一族がそろそろ売り時と判断したのでしょう。


一方、アホールドにとっては久しぶりの買収となります。経営スキャンダル、買収の失敗、等々が重なってしばらくニュースを賑わすようなことをしてこなかったのですが、ようやく動き出した印象です。


ユークロップスはしばらく看板は維持するそう。ただし日曜日は営業し、しばらくの期間をおいて酒類の販売を開始、その時点で看板を変えるそうです。

鈴木敏仁 (04:08)


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2009年12月16日
ソル・プライス逝去、享年93歳

ソル・プライスが月曜日に逝去されました。享年93歳。

プライスはメンバーシップホールセールクラブという業態の創始者です。
1976年にサンディエゴで創業、その後カリフォルニアを中心に店舗網を広げたのですが、自分の部下だったシネガルがスピンアウトしてシアトルで創業したコストコと1993年に合併、名称がプライスコストとなったのですが、1997年にはオリジナルのコストコに戻って、この時点でプライスという名称のついた店舗は消滅しました。

その後は息子と一緒にラテンアメリカにプライススマートという同じメンバーシップ制のホールセールクラブを創業し、再びけっこう大きな事業へと成長させてました。


プライスクラブがアメリカの流通業界に与えた影響ははかりしれません。
サムズはプライスクラブのコピーですが、サム・ウォルトンはこのビジネスモデルの影響を受けてEDLP/EDLC戦略に踏み切ったんじゃないかと、私は思ってるんですね。

またホームデポ、トイザラスといった、当時の錚々たるカテゴリーキラーのほとんどがプライスクラブの影響を受けてます。


つまり、アメリカの流通業を大きく変えたと言っても過言ではないんですね。


あまり大きなニュースになってませんけど、プライスの逝去は私にとってはとても大きなニュースです。一つの時代が終わったような気がします。

鈴木敏仁 (05:31)


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2009年12月14日
[フレッシュ&イージー] 目的は空白市場を埋めること

コンビニエンストア業界の業界誌がフレッシュ&イージーの店舗デザイン担当者とのインタビュー記事を掲載しています。

ポイントは以下の3つでしょうか。

◇アメリカの食品リテーラーはおおまかに、3,000sqf(85坪)~4,000sqf(113坪)のコンビニ、35,000sqf(986坪)~80,000sqf(2,254坪)のスーパーマーケット、120,000sqf(3,380坪)~200,000sqf(5,634坪)のスーパーセンターに分類できるが、4,000sqf(113坪)から35,000sqf(986坪)の間が空白となっている。このギャップを埋めることが目的である。

◇アルディ、トレーダージョーズ、ホールフーズの影響を受けた

◇店に面白みがないというお客の意見が多かったので、店内装飾やメッセージング二手を加えた。


3つ目は既知の事実ですね。
1つ目と2つ目は、そうだろうと周囲では言われていたものですが担当者のコメントとして見るのははじめてです。

日本でテスコを見たばかりなので、この企業の日米の戦略について何かと考えてしまいます。


なお記事のオリジナルはこちらです。参考までに。
Tesco Fresh & Easy Special Feature

鈴木敏仁 (04:45)


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2009年12月13日
オフ会のお知らせ

事後通告となって大変申し訳ないのですが、先週の金曜日に大阪でR2リンクのオフ会があって出席してきました。1次会、2次会ともに盛り上がって、時間があっとまに過ぎ去ってしまいました。いつものことながら、オフ会での時間はあっという間です。

今週は東京でもオフ会があります。
日時は12月16日、場所は日本橋。

詳細はこちらをご参照ください!
第14回R2ネットワーキング@東京

鈴木敏仁 (04:29)


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2009年12月13日
[テスコ] 日本での展開フォーマットの修正

TESCO白根旭台店テスコジャパンが日本での展開フォーマットを変えたのですが、その2号店を見てきました。店名はテスコ、開店は12月4日、私が行ってきたのは横浜市の店舗で、1号店は千葉県にオープンしてます。

簡単に言ってしまえばディスカウント型のスーパーマーケットなのですが、大量に売ることでしか利益を上げられない薄利多売型の日本に昔からあるいわゆるというタイプではなく、ランニングコストを徹底的に抑えた本格的なディスカウント型のように見受けました。

チラシを打っているのですが掲載アイテム数が36程度と少なく、店頭でも値下げ価格を前面に押し出した売り方をしておらず、価格政策の基本はEDLPに置いているようです。
日本のスーパーマーケットによくあるごちゃごちゃ感もないですし、オペレーションはかなりシンプルのような気がします。

おもしろかったのは照度。ランニングコストを抑えるため店内を暗めに設定しているのでしょうね、隣のハックが典型的なドラッグで店内が大量の蛍光灯で真っ白で、テスコからハックに行くとまぶしく感じてしまうほど落差がありました。


相鉄線の鶴ヶ峰という駅からバスで行ったのですが、駅前にウォルマート仕様に改装された西友が偶然ありました。両者は立地上競合しているわけではないのですが、ウォルマートとテスコを日本の閑静な住宅街で見るということに、なにかとても感慨深いというか、複雑な気持ちになったのでした。

鈴木敏仁 (03:59)


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2009年12月10日
[ダラーゼネラル] 第3四半期は絶好調、来年の出店数は600

ダラーゼネラルが第3四半期の業績を発表しました。売上高は12.7%増の29億3,000万ドル、最終利益高は昨年の730万ドルの赤字から7,560万ドルの黒字へ転換、既存店成長率は9.2%増で、絶好調を記録しています。

同時に来年の店舗プランを発表しているのですが、600店舗の新店と500店舗の改装またはリロケーションと、好調な決算数値を反映して非常に強気なプランです。


昨日のクローガーの決算と好対照なので取り上げました。
この業態、相変わらず調子が良い。
なぜ調子が良いのか、特に日本のチェーンストア企業はじっくりと考える必要があるでしょう。

鈴木敏仁 (04:43)


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2009年12月 9日
[クローガー] 第3四半期に大幅な赤字を計上

クローガーが第3四半期に8億7500万ドルの赤字を計上しました。南カリフォルニアのラルフスを10億5,000万ドルで減損処理したためなのですが、減損しなくても25%の減益でした。売上高は0.6%増、既存店成長率は1.3増。
同時に通年の業績予測を下方修正しました。

ラルフスはフレッド・マイヤー買収時に入手した南カリフォルニアのチェーンストアですが、高く買いすぎたんでしょうね。
それとカリフォルニアの不況の影響をまともに食らって売り上げが伸びていないというのもあるのでしょう。

CEOのデイビッド・ディロンのコメントを引きます。
「価格競合がいまだ広範囲にわたっていて、私が覚えている過去のいかなり競合環境よりも激しく、そして予測を超えている」。

何度か紹介していますが、いまアメリカのスーパーマーケット業界ではほとんど全社と言っていいような規模での値下げ合戦が繰り広げられていて、これがどう収益に影響を及ぼすのか興味をもって見ていました。
クローガーの業績不振の露呈は、その結果というわけです。

スーパーマーケット企業各社の業績にしばらく注目です。

鈴木敏仁 (04:02)


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2009年12月 7日
[フレッシュ&イージー] ロイヤルティプログラムを導入か?

ファイナンシャルタイムズ紙が報じたところによると、フレッシュ&イージーが店舗カードを利用するロイヤルティプログラムの導入を検討しているそうです。
ただ、記事として公開する以上かなり信憑性は高いと思うのですが、ニュースソースなどの記載がないので、どこまで本当なのかは不明です。

これがもし真実だとすると、2つの興味深い懸念が浮上します。

一つ目は、EDLPモデルを捨てることになること。リミテッドアソートメントストアとは異なる方向へ向かうことになるわけですが、それで成立するのかどうか。

二つ目は、テスコのロイヤルティプログラムを支えているダンハンビーの米国法人、ダンハンビーUSAはクローガーとの共同出資会社であり、クローガー傘下のラルフスとフレッシュ&イージーが競合しているため、ダンハンビーUSAを雇えない可能性があるということです。

フレッシュ&イージーのCEOティム・メイソンは、テスコのロイヤルティプログラムの成功に大きく寄与した経歴を持った人であるため、この話は当初から出ていたものです。
ただフレッシュ&イージーはやらないと言明してます。

どうなんでしょうね。
今後が楽しみです。

鈴木敏仁 (04:13)


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2009年12月 4日
[フレッシュ&イージー] 配送センターを拡大、米国コミットメントに変化なし

フレッシュ&イージーが来年の夏までに配送センターの拡大工事に着手する予定であることを地元紙が報じました。最終的に、敷地88.4エーカーに建物面積200万スクェアフィートとなるそうです。

この拡大でキャパシティが、現在の235店舗から550店舗に増えると書いてあるのですが、実はアメリカ進出当時の資料で500店舗をカバーする配送センターを作ったと言っているんですね。

この食い違いは何だろうと悩むのですが、おそらく500店舗程度をカバーするキャパを想定したロケーションを当初から確保し、最初は200店舗程度として、店舗数の増大に合わせてキャパを増やすプランだったんじゃないかなと思うんですね。

まあいずれにしてもテスコによる投資は継続してまして、撤退する気はさらさらないようです。


<追記>
来週から日本出張となるため、エントリーが乱れる、または減るかもしれませんが、ご容赦くださいませ。

鈴木敏仁 (03:09)


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2009年12月 3日
[ゼネラルグロース] 年内にも破産法適用から外れる見通し

4月に倒産したゼネラルグロースが連邦破産裁判所に債権計画書を提出、年内にも手続きを終えて破産法管理下から外れる予定であることが分かりました。

資料によると、97億ドルにのぼる不動産ローンの支払い期限を金融企業との交渉で伸ばしたようです。ただまだ52億ドルが残っていて、これについてはまだ交渉中となってます。

両方合わせると149億ドル、日本円にすると1兆円を超えるローンの支払いを延期するわけです。
倒産時点での資産総額は296億ドルで、負債総額は273億ドルでした。

倒産時のエントリーです。
大手モールデベロッパーが倒産

ちなみに業界1位のサイモンが買収に興味を持っているようで、これからまだ動きがありそうです。

鈴木敏仁 (03:21)


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2009年12月 2日
[フレッシュ&イージー] 低いエネルギー消費量でエコをアピール

店舗の単位面積当たりのエネルギー消費量が業界標準よりも32%低いというニュースがリリースされました。年間の節約額は300万ドル。
平均的なスーパーマーケットよりも冷ケースの比率が30%ほど多いので、実質的には32%よりもさらに効率的な運営をしているということになるそうです。

ただしソフトウェア会社によるリリースなので、若干さっ引いて見る必要があるかもしれませんが。


フレッシュ&イージーはオープン当初からエコを全面に押し出してますね。
最初からマーケティングの一つの柱だったように思うのですが、環境意識が比較的高いカリフォルニアを主商圏としていること、エコに鈍い競合他社との差別化要因にしようとしていること、親会社のテスコがエコに力を入れていること、などなどいろんな理由が考えられます。

鈴木敏仁 (02:01)


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2009年12月 1日
[サイバーマンデー] 売上高は増加、歳末の出足は好調

昨日の月曜日はサイバーマンデーでした。
サンクスギビングーの4連休が終わり、月曜日からは仕事でリアルな店舗に行けないためネットで買い物を始める日、という意味で命名されたものですね。考案したのはNRF(全米小売業連盟)で2005年のことでした。


WSJ誌によると、前年比で売上高は11%増、しかし客単価は14%減でした。ただしこれは民間調査企業による500ブランドの追跡結果です。

そのほかにもいろいろ数値が出ているのですが、総体として良かったようです。
良かったのが、リアルからネットへシフトしたからなのか、全体が増えているからなのか、はまだ分かりません。

また先週末のネット販売の増加率が11%という数値もあって、とりあえず歳末のネット販売市場が伸びているということは明らかですね。
ブラックフライデーと合わせて今年の歳末の出足はまあまあ、といったところのようです。

鈴木敏仁 (01:29)


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