2012年6月22日
[ウォルグリーン] アライアンス・ブーツ株の45%を取得

昨日研修が終わりまして今日だけゆっくり時間が取れるので、ウォルグリーンによるブーツへの投資について書いておきます。

今回の投資はブーツ株の45%にあたる67億ドルで、2015年までに残りの55%を95億ドルで取得できるというオプションがついているというディールですね。
つまり現時点では買収ではなく単なる大株主となるだけで、今後の進展次第でM&Aへと進むかもしれないというのが正しい。
買収、という文言がメディアに出てますが、正確に言うと間違ってます。

両社を合わせると、売上で1,000億ドル強、12カ国に11,000店舗、ドラッグホールセラーとしては20カ国に配送先数370ヶ所(ファーマシーや病院など)、という規模となります。
アメリカの売上高ランクだとCVSケアマークに次ぐ3位となります。つまり、ウォルマートに次いで、2位と3位がドラッグストア企業となるわけですね。

さてこのディールの目的なのですが、資料を読むに、ベストプラクティスの共有ぐらいしかコメントが出てきていなくて、真意がよくわかりません。
とりあえず3つほど気づいた点を。

・ブーツは投資企業(KKR)が所有しているので、どこかに資本を売却するか、または上場するか、という二択しか存在せず、買い手がいれば躊躇なく売却するであろうことは容易に想像が付く。

・ブーツはアメリカにどうしても出たかった。商品ではすでにターゲットの専売商品としてアメリカでは売られているが非常に限定的で、拡販するために店舗展開を視野に入れていたような話もある。

・ウォルグリーンはPBMのエクスプレス・スクリプトと取引を中止、急速に成長し大企業となってドラッグストアに大きな影響を与え始めているPBMに対して危機感を募らせている可能性がある。また薬という商品の特性上国境が存在しない製薬業界において、製薬メーカーはいまどんどんグローバル化し巨大化している。つまり取引先が大きくなるにつれパワーバランスが崩れつつあり、取引という観点からさらに大きくならざるを得ないと考えているのかもしれない。


とりあえず、3年後に全株買収へと進むのかどうかが楽しみです。
今回のディールが触媒となってドラッグストア業界のグローバル化がさらに進むのかもしれませんね。


<追記>
来週はまた研修のコーディネートで出張となり、エントリーの頻度が落ちますがご容赦下さい。
今回は、シカゴ→ワシントンDC→NYです。

鈴木敏仁 (01:11)


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2012年6月20日
ラルフスが導入したEDLP

ラルフスのEDLP3ヶ月前にこういう記事をエントリーしました。
[ラルフス] EDLPという名の販促キャンペーン
昨日訪問したラルフスで発見したプライシングが左側の画像なのですが、どうやら本当にEDLPを導入したようです。

左側のEDLPと書いてある値札には価格が一つしかありませんから、値下げ販促ではないことは明らか。右側は価格プロモーションですね。

3ヶ月前に私が店に行ったときはまだやっていなかったということのようです。

店内をざっと見回したところEDLPとしたのはPB商品だけでして、これは合理的なやり方です。
とりあえずNBはハイローを繰り返して集客要素とする。販促が無くなるとお客は飽きちゃいますし、ハイローにどっぷりつかってきた企業がいきなり全商品EDLPにしたらお客が混乱して一気に客離れを引き起こしますから。
そして店内では低く価格を固定したPBをアピールするというわけです。

しかし、あのラルフスが...という感じで、かなり驚きました。
これがクローガー全体の取り組みなのか、ラルフスだけの局所的な取り組みなのか、興味のあるところです。

鈴木敏仁 (02:14)


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2012年6月19日
ベストバイの残骸

ベストバイ撤退店舗@Irvine本日はウォルグリーンによるブーツの買収という大きなニュースがあったのですが、現在研修のコーディネートの真っ最中で資料を読み込んでいる時間が無いため、時間が作れたらエントリーしようと思っています。

ということで、本日は店舗視察中の発見を一つ。
ベストバイの撤退店舗です。視察中、あるものと行ったSCに、ありませんでした。

縮小し始めているベストバイの証拠のような画像だと思います。

私はこの仕事を始めてからもうかれこれ15年近くたつのですが、ことこの南カリフォルニアでは大型店舗をポンポン出店するベストバイしか見たことが無かったので、この残骸には少なからぬ感慨を感じました。

ネット販売に負けつつあることがこの撤退の最大の理由。
時代は急速に動いています。


<追記>
これから二週間ほどエントリーが不定期になりますが、ご容赦ください。視察の様子などをぼちぼち上げていこうと思っています。

鈴木敏仁 (02:21)


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2012年6月15日
[ギャップ] 第1四半期の既存店成長率は3%増、業績悪化は底を打った?

業界ニュースを読んでいてふとギャップの記事に目が止まりまして、数値的にはひょっとすると底を打ったのかもしれないということに気づきました。
今年の既存店成長率は、2月が4%増、3月が8%増、4月が2%減、5月が2%増で、第1四半期の成長率は3%増なんですね。
(ギャップの期末は1月末)

昨年度は4月と6月を除いて10ヶ月がマイナス成長で、通年では4%減でした。

4ヶ月だけなので断言はできませんが、数値のトレンドとしては底を打ったような印象がします。
ただし、この数ヶ月間に不採算店舗を200閉鎖して700店舗体制に縮小していまして、そのせいでプラスになった可能性が高く、例えばヒット商品によって売上がドンと上がったというわけではないですね。
とにかく業績を安定させることが現在の第一プライオリティのようなので、とりあえずは目的を達成できたと言うことでしょうか。

鈴木敏仁 (01:39)


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2012年6月14日
最も人気のあるガソリンスタンドはコストコ

シンクタンクが消費者のガソリンスタンドの好みについての調査レポートを発表しました。
(Market Force Intelligence、N数は4,500人)

・56%がガソリン会社によるスタンドを利用、リテーラーのスタンドを利用するのは32%
・好みのスタンドは、シェル、コストコ、クローガー
・普通のガソリンスタンドは店舗数が多く利用度が高いことを考え、人気度と店舗数を計算で勘案すると、人気のあるスタンドはコストコ、クローガー、サムズ、ヘス、シェルとなって、上位3つをリテーラーが占める。

小売各社はガソリンをロスリーダーとしていますね。とりわけコストコやサムズはもともと荒利益率が10%程度という数値構造を持っていますから、通常のガソリンスタンドが価格で勝負できる相手ではない。
一方セルフが当たり前のアメリカにおいて価格以外で差別化するのは難しく、つまりガソリンはほぼコモディティ化していて、56%が大手ガソリン会社ブランドのスタンドを利用すると答えているとしても、利便性で選んでいるだけで、シェルとかヘスと言ったブランドで選択しているわけでは決してない。

だからこそ大手小売企業は来店動機の一つとしてガソリンを積極的に導入していて、その結果がこのレポートに現れているというわけです。

ガソリンは買い物ついでに小売経営のスタンドで、が当たり前の時代となってきました。

鈴木敏仁 (03:06)


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2012年6月13日
[ウォルマート] 収賄問題の可能性は5カ国に拡大

メキシコで収賄問題が浮上しているウォルマートですが、4カ国増えて5カ国に拡大する可能性があることが分かりました。調査を開始している議員によるレポートが明らかにしたもので、ウォルマートが雇っている法律事務所がソース。ウォルマートは社員に対する聞き取り調査を議員に対してまだ許可していないようで、そのため外部機関が情報の出所となっているようですね。
ブラジル、インド、中国、南アフリカが指摘されている4カ国です。

この問題、おそらく時間がかかるでしょう。
解決するまで数年単位を要すると思う。
下手すると高額のペナルティが待ってますからウォルマートも慎重にならざるを得ませんし。


ウォルマートとしてはスケープゴート化するのが最大の懸念材料と言ったところでしょうか。
贈賄はあちこちでしばしば出てくるネタでウォルマートだけではないのが現実なのですが、アンチウォルマートグループにとっては格好の攻撃材料となります。
外野としては、アンチグループがこのネタをどう利用するのかにも興味があるところですね。

鈴木敏仁 (01:37)


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2012年6月12日
[バーンズ&ノーブル] 米司法省による和解案に反対表明

アップルと大手出版社5社が電子書籍の価格について共謀して価格をつりあげたとして4月に司法省が提訴しました。これに対して先週バーンズ&ノーブルが反対表明したのですが、明らかにアマゾンを意識しているようでなかなか興味深い内容となっています。

アップルは大手出版社5社と2010年に、それまでは小売側に価格決定権があったものを、出版社が決めた価格で売ることに同意していまして、これに対して司法省が介入してきたというわけです。すでに3社は司法省の言い分を認めているようで、つまり依然俎上に上がっているのはいまは2社ということになります。

大手出版社が流通価格をコントロールするシステムでアップルが合意したのは、アマゾンがベストセラーの電子書籍を格安で売っていて、大手出版社がこれに対して反発を強めており、対アマゾンという観点からアップルは大手出版社寄りの姿勢を取ったのだろうと見られています。

今回のバーンズ&ノーブルによる司法省の介入に対する反対表明も、おそらく対アマゾン戦略が背景にあるのだろうと私は思います。
つまりアマゾンを対抗軸として、バーンズ&ノーブルはアップルサイドに立ったということですね。


アメリカの書籍業界には日本のような再販制度はないのですが、出版社が希望小売価格を決めるプライシングモデルは慣行として存在し、書籍に価格が印字されています。ただし法的拘束力が無いので小売は価格を自由に設定でき、大手小売企業は新刊本をロスリーダーとしてしまうことがよくあります。

アマゾンはこれを電子書籍でもやっていて、同じ小売業ですからバーンズ&ノーブルも自由に売る方を選択してもおかしくないのですが、アンチ司法省のスタンスを取るということに戦略的な意図を感じるというわけです。

鈴木敏仁 (03:34)


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2012年6月11日
[アマゾン] 老舗の出版社アバロン・ブックスを買収

アマゾンが創業62年のアバロン・ブックスという老舗の出版社を買収しました。買収額は未公開、約3,000タイトルを手に入れることになります。
目的は電子化、アバロンにはまだ電子タイトルは無いようなのですが、今後数年かけて電子化を進めるとしています。


アマゾンは自らが出版事業を所有しています。名称はアマゾン・パブリッシング、売るだけではなく、作家と契約して出版するという本格的な出版ビジネスを展開している。今回の買収はそのてこ入れが目的となります。

自分で出版までしてしまう理由は、流通のコントロールにあります。アマゾンが市販価格に対して強い影響力を持つようになってきたことに対して大手出版社が警戒を強めていて電子化を拒むといった対抗手段を講じており、アマゾンはそれならば自分で出版してしまい自分ですべてをコントロールしてしまおうとしている。


アメリカの書籍流通はいま大変な勢いで変わっているのですが、今回の買収はその変革の流れの一つということになりますね。

鈴木敏仁 (12:44)


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2012年6月 8日
[ベストバイ] 創業会長のリチャード・シュルツが予定より早く退任、注目が集まる次の一手

ベストバイの創業会長のリチャード・シュルツが会長職と取締役を退任することを決めたのが先月のことで、予定では会長職は今月末、取締役は来年夏頃にやめる、となっていたのですが、昨日突然予定より早く退任したことが明らかとなりました。

この退任の報告を証券取引所に提出しているのですが、理由として"所有株をどうするかすべての選択肢を検討するため"と書かれていて、憶測を呼んでいます。

20.1%の株をすべてを売る、または金融グループと組んでバイアウトするという可能性がある。
バイアウトの場合、ベストバイの市場総額が非常に大きいこと、業績が良くないことがあって、ハードルは高い。
しかし持ち株を売るだけならば、早期にやめる必要はない。

わざわざ"所有株をどうするかすべての選択肢を検討するため"と説明してやめる理由も変に勘ぐってしまいますね。

シュルツの次の一手に注目が集まります。


TwitterR2Link

鈴木敏仁 (03:02)


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2012年6月 7日
[スーパーバリュ] 南カリフォルニアのアルバートソンズが2,500人をレイオフ

南カリフォルニアのアルバートソンズが2,200人から2,500人のレイオフを計画していることが分かりました。ほとんどが店舗従業員で、トータルの12~13%に相当、解雇は来週から開始し7/1までに終わらせるそうです。
またリージョナルオフィスではすでに800人を削減したとのこと。

アルバートソンズはスーパーバリュが買収してから、店頭を見る限りにおいてはほとんど変化が無いんですよね。
新しいデザインのフォーマットはすでにお目見えしているのですが、それがどんどん増えるということもない。

変化がないと言うよりも、進化がないと言う方が正確かもしれない。


組織の簡素化が目的と説明しているのですが、おそらくレイバーコストの削減が主目的でしょう。
こういう選択肢しか取れないというところに、アルバートソンズの苦しさが表れています。

鈴木敏仁 (01:41)


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2012年6月 6日
[スターバックス] コインスターと共同でセルフコーヒーを小売店舗に展開

スタバがコインスターと提携し、セルフでコーヒーを作って買うことができるコーヒーマシーンを全米のスーパーマーケットやドラッグストアに展開するプランを発表しました。
セルフマシーン(英語ではキオスク)の名称はRubi、ブランドはスタバ傘下のシアトルベスト、価格は1ドルから、今夏から展開を開始して年末までに500ヶ所、その後数年かけて数千ヶ所に増やしていくとのことです。

ポジション的にはシアトルベストはポピュラープライスで、プレミアムのスタバとは価格帯が若干異なります。スタバとしては競合しないこの中間価格帯でシアトルベストを強化するということなんでしょうね。

コインスターはレンタルDVDのレッドボックスで知られていますが、もともとはコインを数える機械をほぼ全スーパーマーケットに展開してビジネスを成功させた企業です。スタバがパートナー組んだ理由はこの全米ネットワークを利用するためです。

つい最近までうす~いコーヒーしかなくて、自動販売機でコーヒーを飲むなんて習慣がなかったアメリカですが、ようやくコーヒーが食文化として成熟してきた感じがしますね。

鈴木敏仁 (12:23)


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2012年6月 5日
組織犯罪の被害にあった企業は96%

全米小売連盟(National Retail Federation)が8年目となる小売業界組織犯罪調査のレポートを発表しました。
NRF's eighth annual Organized Retail Crime Survey


昨年もエントリーしたのですが、比較するため今年も載せてみます。

調査対象は大手小売企業125社。

・過去1年間に組織犯罪の被害にあった企業は96%で、前年の94.5%から1.5%増加

・過去3年間に組織犯罪が増えていると答えたのは87.7%

・過去1年間にコンテナ単位の被害にあった企業は52.1%で、前年の49.6%から2.55増加

(昨年の記事はこちら)
増加する米小売業界の組織犯罪


こうみると、組織犯罪は相変わらず増えていると言うことになりますね。

盗みの手口は年々進化し、一方対応する技術も進化しているのですが、抜きつ抜かれつで、つまりいたちごっことなってしまう。
決め手が存在しないというところが頭の痛いところです。

鈴木敏仁 (01:18)


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2012年6月 4日
[ウォルマート] こだわり食品の定期配送を開始

先週の金曜日に株主総会を開催したウォルマートですが、贈賄スキャンダルをうけて主要テーマはコンプライアンスだったようで、株主総会自体からはこれといって目を引くような話は出てきていません。
50周年記念ということもあって、例年よりもさらにお祭り要素が強かったようですね。

総会の模様はこちらで見ることができます。
2012 Walmart Shareholders' Meeting

ちなみに今年はブログで共有できる公式の動画がありません。
YouTubeで検索すると一杯出てきますが、ウォルマートが企業として関与したものではない。
ここ数年とやり方が少し変わりました。


さて、この総会の直前に株主に対するブリーフィングでおそらくおもしろいプランを発表しています。
ウォルマート・コムによるこだわりサンプル商品の有料定期配送です。名称はGoodies(グッディーズ)、直訳だとキャンディ類となりますが、ごほうびにあげたりもらったりするお菓子などに使う俗語ですね。
店頭では売っていないこだわりグロサリーを選び定期的に配送、会員が増えたら食品以外も検討する。
会員価格は未定とのこと、一月以内には開始するようです。

この目的が何なのかについてコメントがないので推測するしかないのですが、とりあえずは宣伝目的であろうことは間違いないところだろうと思います。
例えば人気のある商品が出てきたとして、それを店舗やネットで売るとはちょっと思えない。客層が違いますからね。

そもそも、こだわり商品の定期サービスを喜ぶ客層なのかどうかという問題があります。

うまく行くのかどうか、お手並み拝見といったところですね。

鈴木敏仁 (02:27)


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2012年6月 1日
[レイリーズ] 労働組合との協議がまとまらずストライキの可能性

サクラメントに本拠地を置くレイリーズに、労働組合員によるストライキの可能性が出てきました。
福利厚生費を削減したいレイリーズと労働組合の協議がまとまらず、レイリーズが当面の合意不能を宣言、組合はストライキの許可をすでに出していて、あとは組合員による投票でやるかとうかが決まるという状況です。

ストライキを本当にやるのかどうかは微妙なところなのですが、いずれにしてもレイリーズの苦戦を象徴するようなニュースです。
サクラメント商圏はウォルマートが店舗を集中投下していて、レイリーズのシェアは年々減じています。
そこにこれからフレッシュ&イージーが参入するため、さらに競合が激化します。

そしてここで組合がストライキをやると、業績に悪影響を及ぼすかもしれない。
そうすると、さらにコスト削減の圧力がかかるかもしれない。
店員達が自分で自分の首を絞めてしまう可能性があるわけです。

レイリーズは競合に対抗するために何らかの取り組みを繰り返す必要があるのですが、店舗を見る限りここ数年ほとんど手を入れていません。
経営層にも責任がありそうです。

コンシューマーレポート誌で毎年トップレベルにランクされる企業で、パブリックスやHEバットと並ぶ強いリージョナルチェーンの一角を担ってきたのですが、少々企業が劣化してきているように感じますね。

鈴木敏仁 (02:11)


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