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2011年8月15日
「デパートメントストア業態に復調の兆しか?」Vol.15,No.33

アメリカ流通eニュース

 業態としてのピークを越えて10年以上に長きにわたってシェアを下げ続けてきたデパートメントストア業態に、どうやら復調の兆しが見えてきたようだ。8月初旬に発表された第2四半期の決算によると大手各社ともに好調な数値が並んでいる。資料によると小売業界全体に占めるDept業界のシェア低下が底を打った気配があり、短期的な復調というわけでもなさそうなのである。

*****

 米商務省発表の数値を元にしたシンクタンクの資料によると、1970年代後半に9%を超えていたシェアが毎年右肩下がりでコンスタントに落ち、1990年代後半に6%以下へ、2000年代後半には3%を切ったのだが、2009年の2.9%を底として、2010年は2.5%、そして今年の予測は2.6%と、わずかではあるのだが上向き始めているのである。数値が上向くのは実におよそ30年ぶりということになる。
 この資料でひょっとすると何かが起きているのかもしれないと気づき、各社の決算数値を拾ってみた。
【メイシーズ】売上高59億3,900ドル(前年比7.3%増)、最終利益高2億4,100万ドル(前年比63.9%増)既存店成長率6.4%(半期5.9%)
【コールズ】売上高42億4,800万ドル(前年比3.6%増)、最終利益高3億300万ドル(前年比16.5%)、既存店成長率1.9%(半期1.6%)
【JCペニー】
売上高39億600万ドル(前年比-0.6%)、最終利益高1,400万ドル(前年比0%)、既存店成長率1.5%(半期2.7%)
【ノードストロム】売上高27億1,600万ドル(前年比12.4%)、最終利益高1億7,500万ドル(前年比19.9%)、既存店成長率7.3%
【ディラーズ】
売上高14億4,170万ドル(3.8%増)、最終利益高1,760万ドル(158.8%)、既存店成長率6.0%
 五社ともに増収増益なのだが、加えて既存店成長率がおしなべて良い数値である点が目につく。JCペニーのみ売上高が前年比でマイナスなのだがこれはカタログ販売からの撤退によるものである。すべてネット販売に移行するためでありネガティブな要素ではない。
 Dept業界の数値は常時追っておらず詳しい数値を検証するのは久しぶりのことなのだが、考えてみるとこの一年ぐらい各社供に既存店成長率が高めで推移している記憶がある。シンクタンクの調査数値でトレンドに突然気づいたというのが正直なところだ。

◇変わりつつあるデパートメントストア業態◇
 なぜ復調しはじめたのだろうか。
 SPAと呼ばれる垂直統合型のビジネスモデルではなくサプライヤーに頼る点と、チェーンストアと言いながら各店舗に大きな裁量が与えられてマーチャンダイジングがバラバラであった点など、仕組みの複雑さが衰退の原因だと言われてきたものなのだが、実はいまはこれが強みになっていると指摘されている。
 つまり全店舗のマーチャンダイジングを統一しない分、失敗が修正しやすく柔軟に対応できるというのである。
 他では買えない限定コレクションの開発と成功も大きい。メイシーズのマドンナ、JCペニーのメリー・ケイトとアシュリー・オルセン、コールズのローレン・コンラッドなど、芸能人を利用したブランドが客足に貢献していると言われる。
 このセレブリティ戦略がティーン層へのアピールに成功、いままさに現在進行形で商戦真っ盛りの新学期セールではDSに次いで行きたい業態としてDptが挙げられてもいるのである。Dpt業態の顧客層の高齢化はながらく問題視されてきたのだが、改善しつつあるというわけだ。
 荒利ミックスできる他部門の存在も指摘されている。例えばキッチン用品を値下げして客数を上げて衣料は定番価格を維持する、逆も可能、というわけである。衣料しかないだけではなくラインも絞られているアパレル専門店ではこれができない。
 個人的には顧客層のシフトが大きく寄与しているように思っている。マーケティング、あるいはブランディング戦略が成功してティーン層のイメージを変えたというわけなのだが、これはもっとも難しい取組課題の一つであり、もし本当にそうだとしたらDptの復調は本物だろうと考えて良いかもしれない。
 まだしばらく数値を追う必要はあるのだが、Dpt業態が変わりつつあることは確実なようだ。

鈴木敏仁 (12:55)


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2011年8月 8日
「デイリーディールでロイヤルなお客を獲得できるのか?」Vol.15,No.32

アメリカ流通eニュース

 フラッシュマーケティングという言葉がある。定義についてウィキから引用してみる。
「商品やサービスの提供にあたり、割引価格や特典がついたクーポンを期間限定でインターネット上で販売する手法。一般に24時間から72時間程度の短時間(フラッシュ)に、集客と販売および見込み顧客の情報収集が行われるという特徴を持つ」。
 詳細はウィキをさらにご参照いただくとして、要は短期間の値下げプロモーションをネットで提供する仕組みのことである。ネット販売企業は昔からこの類の企画は実施してきているのだが、グルーポンがシステマチックに広範囲に提供する仕組みを構築し、その手法が一躍注目を浴びるようになった。
 グルーポンは2008年の創業からわずか3年目の今年に上場して250億ドルを調達している。仕組みに対する期待から買われているのだろうが少々過熱気味で、個人的にはバブっているのではないかと少々懸念している。

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鈴木敏仁 (03:53)


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2011年8月 8日
「デイリーディールでロイヤルなお客を獲得できるのか?」Vol.15,No.32

アメリカ流通eニュース

 フラッシュマーケティングという言葉がある。定義についてウィキから引用してみる。
「商品やサービスの提供にあたり、割引価格や特典がついたクーポンを期間限定でインターネット上で販売する手法。一般に24時間から72時間程度の短時間(フラッシュ)に、集客と販売および見込み顧客の情報収集が行われるという特徴を持つ」。
 詳細はウィキをさらにご参照いただくとして、要は短期間の値下げプロモーションをネットで提供する仕組みのことである。ネット販売企業は昔からこの類の企画は実施してきているのだが、グルーポンがシステマチックに広範囲に提供する仕組みを構築し、その手法が一躍注目を浴びるようになった。
 グルーポンは2008年の創業からわずか3年目の今年に上場して250億ドルを調達している。仕組みに対する期待から買われているのだろうが少々過熱気味で、個人的にはバブっているのではないかと少々懸念している。

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 先日、日本のとあるローカルチェーンレストランのオーナーと話をする機会があった。グルーポンについて質問され、「バーゲンハンターばかりでロイヤルなお客は少ないと言われていますよ」と答えたところ、「実はまったくそのとおりでホッパーばかりなのです、確認できてよかった」という言葉が返ってきた。
 ホッパーという表現は外食業界用語だろうか。あちこち飛び回るという語感でなかなかしっくりくる言い回しだ。実はその効果は一時的なものに過ぎないという調査結果がアメリカではだいぶ前から出ているのだが、日本の実務家の見方と一致したというわけである。
 その調査結果からいくつかコメントを拾ってみよう。ちなみに日替わりで作られる販促ディールという意味でアメリカではデイリーディールを使うことが多い。
「このプログラムには飽和というリスクが大きい。バーゲンから感じるスリルに対する免疫が作られて最終的にはスリルを感じなくなる。"今だけ"や"大安売り"といった売り文句で10通近い販促メールが毎日届くと、いま買わなければならないと思わせることが極めてむずかくなる。もしどれもいつも値下げされていると、値下げ価格が新たな定番価格となってしまう。」(消費者心理専門の学者)
「ネット購買者の52%が過剰なデイリーディールに飽きていて、ほぼ同じ50%強の人が半額まで値下げされていれば買うかもしれないと答えている。」(ネット企業による調査)
「デイリーディールに対して最初は熱狂的に興味を持ち友人や家族と共有しようとするが、時間が経つにつれて共有しなくなる。古典的な現象だ。」(外食産業への影響を調査している大学教授)

◇価格販促が持つ宿命をどう克服するか◇
 フラッシュマーケティングと言うと何か特別なマーケティングのことかと勘違いしやすいのだが、デイリーディールと言われると分かりやすいのではないだろうか。毎日提供される特別なディールというわけで、言ってみれば日替わりの目玉のようなものである。日本のスーパーマーケットでは時間制の割引まで存在することを考えると、とりたてて珍しい手法というわけでもない。
 違いはネットで不特定多数に訴求し、あらかじめまとまった数のお客による購買約束をとりつけておくことぐらいか。どのぐらい売れるか事前に分かる点は、蓋を開けるまで分からない店頭販促に比べると便利かもしれない。
 いずれにしても本質は値下げ販促であってそれ以上でも以下でもなく、だから必ず飽きられるというリスクを背負っているわけだ。それゆえ上記のような調査結果が出てくるというわけで、よく考えればごく当たり前の結果とも言える。
 また本質的にバーゲンハンターであるがゆえにロイヤルカスタマーになる可能性も低いということなのだろう。新規顧客開拓の初期ツールにはなりそうだが、来店してディール商品を買ってもらい、それからどうやって儲けさせてもらうかが難しそうだ。
 スーパーマーケットのビッグYグがグルーポンで実験したことについては書かせていただいた。グルーポンで集客し、FSPと連動させ、店頭でカードを使うことで大幅な値下げが適用されるという仕組だ。購買履歴の分析と組み合わせることで新たな何かができるかもしれないという期待も感じるのだが、しかし結局は新たな販促の一つで終わるのだろうという気もしている。
 グルーポン型の新たな販促手法に対する小売や外食の正しいアプローチは、深入りもせずしかし無視もせずという姿勢ではないだろうか。過剰な期待をかけると痛い目に合うかもしれないという警戒感だけは持っているべきだろうと思っている。

鈴木敏仁 (01:05)


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2011年8月 1日
「シアーズのネットビジネス強化」Vol.15,No.31 08/01

アメリカ流通eニュース

 シアーズのマーケティング担当責任者(CMO)にネット販売企業の元役員が就任することが分かった。食品のネット販売で著名なフレッシュダイレクトのマーケティング&企業戦略担当だった人物だ。フレッシュダイレクト以前もネット販売企業やネット系サービスでの経歴を持つ女性で、つまりネットビジネスのスペシャリストである。
 今年初頭、同社がCEOとして据えたのがネットワーク機器メーカーのアバイアの元役員であった。3年間空白だったCEOポジションがようやく埋まることになったわけなのだが、テクノロジーをキャリアパスとして持つ人材によるリテール経営能力に疑問の声が上がったものである。
 今回の人事とつなげてみると、シアーズ(と言うよりもエディ・ランパート)がこれから何をしようとしているのか透けて見えてくる。

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鈴木敏仁 (03:51)


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2011年7月25日
「フレッシュ&イージー、オペレーションのオーバーホールに着手」Vol.15,No.30 7/25

アメリカ流通eニュース

 フレッシュ&イージーがオペレーション全体の改革に取り組んでいる。英ファイナンシャルタイムズ紙が報じたもので、同社についての情報はイギリス発の方が早く正確だ。英テスコとのコネクションが強いからなのだろうが、アメリカの業界誌よりもスピードと精度が高い。
 ポイントは2つ、店内の改装とFSPの導入である。来年度の黒字化に向けてフレッシュ&イージーの動きが活発化している。

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鈴木敏仁 (03:49)


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2011年7月18日
「ボーダーズ、再建を断念して清算へ」Vol.15,No.29 7/18

アメリカ流通eニュース

 経営破綻し裁判所の管理下にあるボーダーズが再建を断念、企業清算の決定を発表した。連邦破産法11条を申請したのが2月だったので、破綻から半年弱で消滅が決まったというわけだ。
 この清算が持つ意味は小さくないだろう。アメリカの書籍ビジネスがこれからどうなるのか。立ち読みで買うという選択肢が圧倒的に少なくなってしまったアメリカの消費者はこれからどうするのか。日本も同じような道筋をたどって行くのか。
 いろいろ考えさせられる事例である。

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鈴木敏仁 (03:24)


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2011年7月11日
「セルフレジと決別するアルバートソンズ、その意味を考える」Vol.15,No.28 7/11

アメリカ流通eニュース

 アルバートソンズは企業が売却されて以来、スーパーバリュ傘下と投資企業傘下(名称はアルバートソンズLLC)と2つの事業体に分化しているのだが、今回は後者が始めた新たな戦略の話である。
 セルフレジを全217店舗から撤去するという。昨年のリモデル店舗から順次撤去を開始していて、現在残っているのが100店舗で来月中にすべてを撤去する。
「お客と会話ができるレジの方が我々にとってはベターなアプローチだと感じている」(コミュニケーション担当部長)
 キャッシャーという専門職を必要としないセルフレジはもはや必要不可欠な機能で、アメリカの流通業界では一時的な流行などではなく取り入れるのが当たり前となってきている。フレッシュ&イージーのようにすべてセルフにするフォーマットすら生まれている。
 従ってこのアルバートソンズの考え方は一見すると時代に逆行するものである。業界人が意見を書き込むコミュニティサイトでも批判的な意見が多かったのだが、しかし私の見方は異なり、そして私と同じ見方で書き込んでいる人もいて、間違ってはいないと確信したのであった。

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鈴木敏仁 (03:22)


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2011年7月 4日
「常識の呪縛から解放されたホールフーズの組織運営」Vol.15,No.27 7/04

アメリカ流通eニュース

 アメリカの大手小売企業の中で、常識にとらわれないもっともラジカルな組織運営を実行しているのがホールフーズである。おそらく創業CEOのジョン・マッキー以下幹部全員、いわゆるよくあるチェーンストアの運営理論などほとんど無関係でここまできたのではないかとまで思っている。
 それでも、売上高90億ドル(およそ7,000億円)、店舗数300を超え、またフォーチュン誌が選ぶ働きたい企業ランキングで24位にランクインするなど労働環境に対する評価も高く、ウォルマート以上に研究に値する企業だと個人的に思っている。

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鈴木敏仁 (03:21)


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2011年6月27日
「小売を悩ます組織犯罪、頭痛の種は日米一緒」Vol.15,No.26

アメリカ流通eニュース

 日本から来る研修グループから必ず聞かれる質問の一つが万引きである。外国人を中心とした窃盗団による被害に頭を悩ましている流通人が日本では少なくないのだが、アメリカの売場は日本と比較すると万引き対策が甘く見えるようで、どう対処しているのか疑問が湧くようだ。
 所得によって住み分ける傾向が強いアメリカの場合、低所得層エリアに出店する店舗では対策を十分すぎるほど取っていたりするのだが、そういう危険なエリアに視察で行くことはあまりないから甘く見えるのだろう。
 カナダのトロントで低所得層エリアにあるドラッグストアに行ったのだが、中~高価格帯の化粧品がすべて鍵付きの什器に入っていて驚いた。おそらくあれでは売れ方はがた落ちなのだろうが、万引きされるよりはましということだと推測できて、そういう売場を見れば日本からの人たちも納得するのだろう。

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鈴木敏仁 (03:19)


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2011年6月20日
「ベストバイによる売場のテナント貸しとビッグボックス時代の終焉」Vol.15,No.25

アメリカ流通eニュース

 ベストバイが売場の一部をサブリースすることを検討していることをローカル紙が報じた。不動産ブローカーに発送されたチラシによると、南カリフォルニア46店舗の4,000~15,000sqf(112~423坪)程度のスペースをテナントに貸し出すという。
 アメリカでは80年代から90年代にかけて店舗の大型が進んだ。牽引したのがディスカウントストアとスーパーマーケット、とりわけディスカウントストアの店舗の形状が大きな箱のようなのでビッグボックスと呼ばれたものである。
 このビッグボックス時代が終わったという論調が大勢を占め始めている。前々回のレポートでとりあげたが自治体の税収が落ちているのも、大きな"ハコモノ"市場が縮小し始めているからに他ならないのである。

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鈴木敏仁 (03:17)


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