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業態としてのピークを越えて10年以上に長きにわたってシェアを下げ続けてきたデパートメントストア業態に、どうやら復調の兆しが見えてきたようだ。8月初旬に発表された第2四半期の決算によると大手各社ともに好調な数値が並んでいる。資料によると小売業界全体に占めるDept業界のシェア低下が底を打った気配があり、短期的な復調というわけでもなさそうなのである。
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米商務省発表の数値を元にしたシンクタンクの資料によると、1970年代後半に9%を超えていたシェアが毎年右肩下がりでコンスタントに落ち、1990年代後半に6%以下へ、2000年代後半には3%を切ったのだが、2009年の2.9%を底として、2010年は2.5%、そして今年の予測は2.6%と、わずかではあるのだが上向き始めているのである。数値が上向くのは実におよそ30年ぶりということになる。
この資料でひょっとすると何かが起きているのかもしれないと気づき、各社の決算数値を拾ってみた。
【メイシーズ】売上高59億3,900ドル(前年比7.3%増)、最終利益高2億4,100万ドル(前年比63.9%増)既存店成長率6.4%(半期5.9%)
【コールズ】売上高42億4,800万ドル(前年比3.6%増)、最終利益高3億300万ドル(前年比16.5%)、既存店成長率1.9%(半期1.6%)
【JCペニー】
売上高39億600万ドル(前年比-0.6%)、最終利益高1,400万ドル(前年比0%)、既存店成長率1.5%(半期2.7%)
【ノードストロム】売上高27億1,600万ドル(前年比12.4%)、最終利益高1億7,500万ドル(前年比19.9%)、既存店成長率7.3%
【ディラーズ】
売上高14億4,170万ドル(3.8%増)、最終利益高1,760万ドル(158.8%)、既存店成長率6.0%
五社ともに増収増益なのだが、加えて既存店成長率がおしなべて良い数値である点が目につく。JCペニーのみ売上高が前年比でマイナスなのだがこれはカタログ販売からの撤退によるものである。すべてネット販売に移行するためでありネガティブな要素ではない。
Dept業界の数値は常時追っておらず詳しい数値を検証するのは久しぶりのことなのだが、考えてみるとこの一年ぐらい各社供に既存店成長率が高めで推移している記憶がある。シンクタンクの調査数値でトレンドに突然気づいたというのが正直なところだ。
◇変わりつつあるデパートメントストア業態◇
なぜ復調しはじめたのだろうか。
SPAと呼ばれる垂直統合型のビジネスモデルではなくサプライヤーに頼る点と、チェーンストアと言いながら各店舗に大きな裁量が与えられてマーチャンダイジングがバラバラであった点など、仕組みの複雑さが衰退の原因だと言われてきたものなのだが、実はいまはこれが強みになっていると指摘されている。
つまり全店舗のマーチャンダイジングを統一しない分、失敗が修正しやすく柔軟に対応できるというのである。
他では買えない限定コレクションの開発と成功も大きい。メイシーズのマドンナ、JCペニーのメリー・ケイトとアシュリー・オルセン、コールズのローレン・コンラッドなど、芸能人を利用したブランドが客足に貢献していると言われる。
このセレブリティ戦略がティーン層へのアピールに成功、いままさに現在進行形で商戦真っ盛りの新学期セールではDSに次いで行きたい業態としてDptが挙げられてもいるのである。Dpt業態の顧客層の高齢化はながらく問題視されてきたのだが、改善しつつあるというわけだ。
荒利ミックスできる他部門の存在も指摘されている。例えばキッチン用品を値下げして客数を上げて衣料は定番価格を維持する、逆も可能、というわけである。衣料しかないだけではなくラインも絞られているアパレル専門店ではこれができない。
個人的には顧客層のシフトが大きく寄与しているように思っている。マーケティング、あるいはブランディング戦略が成功してティーン層のイメージを変えたというわけなのだが、これはもっとも難しい取組課題の一つであり、もし本当にそうだとしたらDptの復調は本物だろうと考えて良いかもしれない。
まだしばらく数値を追う必要はあるのだが、Dpt業態が変わりつつあることは確実なようだ。
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