2007年9月28日
ウォルマート、ジェネリック値下げフェーズⅡ

昨年9月に開始して内外の大注目を浴びたウォルマートによるジェネリック処方薬の値下げですが、27日にフェーズⅡに入ることがリリースされました。
対象とする処方薬の数の増加と、ジェネリック新薬の値下げと、2つが骨子となってます。

このイニシアチブ、大手スーパーマーケットやターゲットなど追随する企業が後を絶ちませんでしたが、ドラッグストア企業は完全に無視しており、反応は両極端でした。

ウォルマートにとっては客数アップなどポジティブな結果が出ているようで、それがこのフェーズⅡにつながったわけです。

宣伝効果も抜群じゃないでしょうか。
ウォルマートもちゃんと計算してます。プレスリリースには、フェーズⅠの導入以来お客にとって $613,581,3698.70の節約につながったとか、これを州別に細かくブレークダウンしたりしています。この笑ってしまうほどの細かい数値を載せるのも、大向こうを意識したことだと思います。

環境イニシアチブと立て続けという点も、意図的なものを感じます。
こういうことは、ポンポンと続けて出したほうが注目を浴びやすいですから。

今回は各社がどう出るのか、楽しみなところです。

鈴木敏仁 (07:57)


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2007年9月27日
衣料用洗剤を濃縮型に絞るウォルマート

ウォルマートが衣料用洗剤カテゴリーで濃縮型しかマーチャンダイジングしないことを明らかにしました。来年の5月までにはウォルマートとサムズ全店で実現することをコミットするとしています。

これは環境イニシアチブの一環です。これによって、4億ガロン以上の水、9500万ポンド以上のプラスチック樹脂、1億2500万ポンド以上の段ボールを節約できるとする。水だけでも、1億回のシャワー分にあたるそう。

ウォルマートが売る衣料用洗剤のシェアは全米の25%を占めていて、ウォルマートが動くことによるインパクトが大きいカテゴリーなのですね。
ウォルマートにおいて他に選択肢をなくすということは、市場に与える影響は凄く大きい。大きな決断だと思います。

この結果は環境にいいだけではなく、棚の上のスペースが広がることも意味してますね。環境を訴え、スペース効率も高まる。これで売れ行きが落ちなければ、ウォルマートにとっては最高の取り組みとなるわけですが・・・。
ウォルマートは戦術転換で有名。やっぱり売れなかったのでやめます、にならないことを祈りましょう。


ところで、ニューヨークタイムズがコラムでこのウォルマートをほめているらしい。同社の環境に対する取り組みは、米国政府やまして中国政府よりも先んじている、カリフォルニアに肩を並べるほどだ、というような趣旨のようです。

一昨日、こういうエントリーを書きました。
ウォルマートによる温室効果ガス排出量削減イニシアチブ

ここで私は、京都議定書をウォルマートが批准すればよかったんじゃないかと冗談交じりに書きましたが、コラムの執筆者と言おうとしていることの本質が同じで、笑ってしまいました。
米国政府の遅い対処にイライラしている人はけっこういるということです。


そう言えば、食品労働組合によるウォルマートバッシングも鳴りをひそめてきましたね。ニューヨークタイムズが賞賛しはじめてしまうと、重箱の隅もつつきづらいことでしょう。

鈴木敏仁 (02:09)


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2007年9月26日
テスコが出店予定数を増やし、98店舗に

アメリカですでに50店舗の出店を予定していたテスコですが、さらに追加で48店舗の出店予定地を手当てしたことが分かりました。当初の50店舗は、ロサンゼルス、ラスベガス、フェニックスでしたが、今回の48店舗はロサンゼルス近郊のリバーサイドとサンバナディーノに集中しているようです。

このリバーサイドにDCを建設しており、効率を考えて周辺にクラスターを作ることを目的として、この48店舗を集中させるように思います。

リバーサイドとサンバナディーノは総称としてインランド・エンパイヤと呼ばれますが、この地域は現在開発が進んでいて人口が増えています。ロサンゼルス中心部の地価が高騰したため外側へ外側へと住宅が広がっていて、その中心となっているのがこのインランドエンパイヤです。
少し走ると砂漠、土地にはかなり余裕があり、出店ロケーションの手当ても楽なのでしょうが、しかしいっきに48店舗というのは、桁が違います。

来年早々には北カリフォルニアにも出店を開始するプランもあるそう。


まるで絨毯爆撃のようですね。
資本力の違いをまざまざと感じます。

ちなみに一号店舗は11月オープンの予定のようです。

鈴木敏仁 (01:43)


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2007年9月25日
ウォルマートによる温室効果ガス排出量削減イニシアチブ

ウォルマートが新たな環境イニシアチブを発表しました。Carbon Disclosure Project (CDP)というNPOとパートナーを組んで、サプライチェーン上における特定商品のエネルギー消費量を測り、温室効果ガス排出削減を目指すそうです。

まずコモディティに属する7分野の商品を提供する25縲鰀30メーカーを選択し、商品製造から配送に至るまでのエネルギー消費量を測定。しかるのにち、温室効果ガス排出量を削減する手段についてメーカーとともにパイロットテストを実施するとしています。

CDPは機関投資組織が中心となって運営されている非営利団体で、企業活動と温室効果ガス排出量を関連付ける取り組みをしています。誤解を恐れずにごく簡単に言ってしまうと、株価と当該企業のグリーン度を関連付ければ、各企業はもっと環境に積極的になるだろうということだと思います。

このCDOは、サプライヤーによるエネルギー消費量を測定後、その数値を温室効果ガス排出量に変換するそうです。


ウォルマートはパッケージング・スコアカードの実験をしてまして、来年から本格的にスタートします。
ウォルマートのパッケージング・スコアカード
これとの関連性は不明。


このイニシアチブをイメージアップのためのただのリップサービスと見るか、本気で環境を心配してと見るかは、異論があるでしょう。ホールフーズが生きたロブスターの販売をやめたときに、ロブスターの'quality of life'のためとして動物愛護を訴えていましたが、実際は儲からないという現実的な理由もあったことと同じです。

とりあえず、環境問題にうといアメリカですから、ウォルマートと言う巨大な企業による取り組みが与える他企業への影響を考えると、意味のあることでしょう。

京都議定書の議決からアメリカは離脱しましたが、ウォルマートが単独で批准すればよかったんじゃないでしょうかね(笑)
GDP換算で、世界で7位とか6位の国家予算レベルにランクされる企業ですから。アメリカがいなくても、ウォルマートが批准するだけで十分機能してしまうように思います。

鈴木敏仁 (01:51)


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2007年9月24日
「店舗民主主義を体現するホールフーズのユニークさ」Vol.11,No.39

アメリカ流通eニュース

 業界誌で何回か書いてきているのでご存知の方も多いことと思うのだが、ホールフーズのビジネスモデルの本質は、スーパーマーケット業界の常識として我々が考えていることのほとんどを否定してきていることにあると私は思っている。否定と言う表現が大げさならば、アンチテーゼ、と言ってもいいかもしれない。
 売価を上下させるハイローなし、チラシの配布なし、ロイヤルティマーケティング(またはポイントカード)なし、などあげたらキリがないのだが、徹底的な店舗分権主義もその一つだろう。例えばマーケティング予算を店舗に割り振って、どう使うかは店舗にまかせてしまうなど、一般に考えられているチェーンストア理論とはまったく異なる思想で、200店舗近くまで成長を続けてきているのである。
 この店舗分権主義を支えるには、店員それぞれが責任を持って働く仕組みが必要なのだが、これをFortune誌がマネジメントに関する記事で一部を紹介していて、なかなかおもしろいので、意訳抜粋してみたいと思う。

<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>

鈴木敏仁 (01:33)


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2007年9月24日
小売チャネルで伸びる調理済み食材

Prepared Mealとは、家で食べるための調理した食材のことです。一時期ブームになって今はもうほとんどアメリカでは使われなくなったHMRという表現もあります。
日本語だと惣菜でしょうか。英語ではお弁当も含まれているので、正確ではないかもしれません。

過去2年間の小売チャネルにおけるこのカテゴリーの成長率が、外食チャネルの成長率を上回っていることが、シンクタンクの調査によって分かりました。
小売チャネルの成長率は5%、外食チャネルは3%、でした。

参考までに、Prepared Mealのフォーマット別シェアは、コンビニ54%、スーパーマーケット32%、マスリテーラー11%、ウェアハウスクラブ3%となっています。

個人的には、アメリカのコンビニが売っている惣菜系って非常におそまつなので、54%というシェアには結構驚いてます。ホットドッグなどの軽食シェアが高いということでしょうかねえ。


さて小売チャネルが伸びている理由ですが、外食と比較して価格が安いこととが指摘されています。プラス、近くて便利というコンビニエンス性でしょうね。
またウォルマートに対抗して、各社ともに惣菜系に力を入れていることも背景としてあるかもしれません。主通路の外側(日本では壁面でしょうか)を強化することでウォルマートと差別化するスーパーマーケットが多く、その結果が出てきた可能性があります。

ちなみに、小売チャネルのPrepared Mealの品質がここ数年間に向上しているとは正直思えないので、「おいしくなった」という理由は当てはまらないかもしれません。各社が強化しているのは、品質よりもむしろ拡大だと考えています。

鈴木敏仁 (01:06)


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2007年9月21日
ボンベイ・カンパニーが倒産

ホームファニッシングの専門店チェーン、ボンベイ・カンパニーが連邦破産法11条を申請して倒産。DIPファイナンスと呼ばれる事業再建融資で1億1500万ドルの融資枠を金融グループから得て、裁判所の管理下のもとで再建を進めることとなりました。

ボンベイは18縲鰀19世紀の英国風のスタイル、いわゆるコロニアルという呼ばれるデザインのホームファニッシングで成長しました。家具をメーンとし、小物も揃え、かなりユニークなマーチャンダイジングです。

店舗数はモール内に400強、全盛期には500くらいまでいっていたんじゃないでしょうか。

ただここ数年不振で赤字が続いていました。


ホームファニシングにも流行があります。衣料のように激しくはなく、5縲鰀10年のスパンで動いてゆく。これにやはり乗らないとだめなんだということが、このボンベイの倒産でよく分かります。
コンテンポラリーデザインをメーンに据える別フォーマットを開発して失敗したりして、トランスフォーメーションに失敗してきたのが敗因じゃないかと思ってます。

同じことが、ピア1インポーツにも言えます。一世を風靡した専門店チェーンですが、いまは業績不振にあえいでいる。強烈な個性は、飽きられるのも早い。


バイアウトされなかったというのも、興味深いです。モール内出店のためほとんどがリースで自社物件がなくて、資産整理してもおもしろくない、ということかもしれないですね。

復活を祈りましょう。

鈴木敏仁 (11:47)


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2007年9月20日
コストコがモールの核店舗に

LAタイムズが報じたところによると、ロサンゼルス郊外のロングビーチのショッピングモール(Lakewood Center)にコストコが入ることが決まったそうです。
現在メイシーズ(2店舗)、ターゲット、マービンズ、JCペニーが核店舗で、メイシーズの1店舗が抜けた後に入る模様。開店は来年秋の予定。

メイシーズが抜ける理由はM&Aのようですね。買収によって同じモールに核店舗として入っていた他の店舗がメイシーズに変わってしまい、2つになってしまった。だから一つ抜ける。


モールの核店舗としてディスカウントストアが入るというパターンは少しずつ増えていて、今後も増えることでしょう。デパートメントストア企業の数が減ってしまったこと、デパート自体の集客力が落ちてしまったこと、そしてディスカウントストアの出店可能立地が減ってきていること、が考えられます。

モールを管理しているマネジメント側も死活問題ですから、ディスカウントストア向けにリースを安く提供することもある。また活性化プランに乗れれば、行政がコストの一部を負担してくれることもある。モールの高リースがマッチしないディスカウントストアモデルも、そういうディールがあれば出店可能というわけです。


ターゲットはけっこうモール出店をしてます。商圏がもともと大きなフォーマットですから、整合性があるんですね。ウォルマートは数ヶ所。

紙面によるとコストコも何箇所かモール内店舗を持っているようなこと書いてありますが・・・マッチするんでしょうかね。コストコではあのアメリカでも大きなサイズのカートに一杯買い物をする人が大半で、買った大量の商品を車に積みに行って、またモールに戻って買い物するのかどうか。

逆はあるかもしれませんね。モールをぶらぶらして、それからコストコで買い物して帰る・・・。

ちなみに二層を一層に改装するようです。

鈴木敏仁 (03:17)


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2007年9月19日
拡大するマーサ・スチュワートの商品ライン

来週Kマートが、商品を切り替えた新マーサ・スチュワートラインを投入するそうです。ご存知の通り、名称はマーサ・スチュワート・エブリデイ、カテゴリーはホームファニッシング。Kマートに初めて導入されたのが97年のことなのですが、それ以来商品を大きく刷新したことはなかったそうです。

倒産でイメージが落ちたこともあって、マーサ・スチュワートはKマートでの販売をやめたかったようですね。しかしKマートにとってはドル箱ブランドであるため、引き続き売りたい。契約内容についていろいろ駆け引きがあったようで、両社の確執が報じられたりしました。

両社の契約は09年に切れるそうで、確執についてはまだ決着がついていません。


マーサ・スチュワートはメイシーズと組んで、'マーサ・スチュワート・コレクション'というホームファッションラインを導入しています。価格帯はプレミアムとなるので、Kマートラインの上位に位置する商品ラインですね。

コストコと組んで食品にも参入する。
ワインを作るというニュースも流れたばかりです。

刑務所入りというネガティブイメージをはね返し、マーサ・スチュワートの小売業界での存在感は増すばかりです。

鈴木敏仁 (02:30)


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2007年9月18日
ターゲットがクレジット事業の売却検討?

ミネアポリスの地元紙が報じたようです。ターゲットは売らないと言っていたのですが、真偽のほどはどうなんでしょう。

ターゲットのクレジット事業は自社オペレーションです。自社でしか使えないカードと、他でも使えるビザカードと二種類発行していますが、ここ数年は後者を強調してきました。

昨年度のカード事業の売上高は約16億ドルで全体の2.8%を占めるにすぎません。しかし、税引き前の営業利益に対しては15%も占めている。また売掛けとして計上している年間平均残高は61億ドル、これは総資産の16%にあたります。
たしかシアーズの全盛期には、クレジット事業が営業利益の3分の2を占めていたように記憶しているので、まだ依存度はそれほど高くないとも言えます。

アメリカの大手リテーラーで自社でクレジット事業を運営しているのはターゲットだけじゃないでしょうか。他はみんな売却してしまいました。理由は今ひとつクリアではないのですが、リテールとは関係ないビジネスではありますので、ほとんどの企業がやるなら他社運営とするほうが効率が良いと判断しているのだろうと考えています。

ターゲットはクレジット事業の利益をマーケティングコストに充当するとしています。またビザカードだと他社での買い物情報が入るという利点がある。(データを活用しているという話はまだ聞いたことはありません)
だから、事業として価値があるから、売らないとずっと言い続けてきました。


最近ウィリアム・アックマンという投資家が株を10%まで買い増しており、この人のプレッシャーではないかという見方もあります。


サブプライム問題でこれから焦げ付きが増えてくるかもしれず、そう考えるとこの時点で売却してしまうというのは、いいことなのかもしれませんね。
今後に注目でしょう。

鈴木敏仁 (01:33)


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2007年9月17日
'Always Low Prices'から'Save Money. Live Better.'へ

ウォルマートが企業キャッチフレーズを、あの有名な'Always Low Prices'から、'Save Money. Live Better.'へ変更することを発表しました。

日本の小売業界ではあまり意識されていないことなのですが、アメリカの小売企業はそれぞれキャッチフレーズをつけています。英語ではタグラインとも、モットーとも呼ばれます。
またブランディングの世界では、マントラと呼ぶ人もいます。

自社のミッションを端的に表現する言葉をかかげ、戦略戦術すべてのよりどころとする。お客にもメッセージを伝え続けることで、自社がいったいどういう会社なのかを分かってもらおうとする。

マーケティング担当役員(CMO)ステファン・クィンのコメントが分かりやすいかもしれません。
「'Save Money. Live Better.'はタグライン以上のものだ。4つの重要な単語に我々のミッションを集約している」。


'Always Low Prices'は19年間使用したそうです。

低価格を前面に押し出すことをやめた。
この変更は、ウォルマートがいま指向している戦略転換の象徴だと考えて良いでしょう。

鈴木敏仁 (02:49)


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2007年9月17日
「DSDとトヨタの調達管理ポリシー」Vol.11,No.38

アメリカ流通eニュース

 アメリカのマスリテール業界には、店頭まで商品を運ぶという観点で、3つの商品供給の仕組みが存在する。自社物流、卸物流、そしてダイレクトストアデリバリー(DSD)である。日本の卸も大きな観点からはDSDに分類できるのだが、アメリカのDSDの特徴は、発注や補充はもとより、マーチャンダイジングまでDSD業者が請け負っている点にある。
 この場合、店頭においてはその商品群に店員は一切関与しない。例えば非食品に弱いスーパーマーケットの場合、コスメのゴンドラはほぼDSD業者がマーチャンダイジング(MD)から発注補充までやっているのである。
 業界平均で売上の25%、売場の21%をDSDが占めていて、実はかなりのボリュームなのだ。アメリカのSMは店舗面積が広いが、すべてを直営でやっているわけではないということは知っておいて損はない。

<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>

鈴木敏仁 (01:31)


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2007年9月13日
Put Employees before Customer

コンテナストアという企業があります。
『働きたい会社ベスト100』、5位までにリテーラーが3社ランクイン
このランキングで今年は4位にランクされた企業です。
この7月にはバイアウト企業が資本出資しており、上場も近いのではないかと思っています。

さて最近業界誌や全国誌に創業者二人がしばしば顔を出すようになって、非上場なので細かい業績は分からないものの、きわめて優れた社風の根源のようなものが少しずつ分かってきました。

Fortune誌が9月号で創業者の一人、キップ・ティンデルを連載で取材していて、誌面の目的が'社長の仕事の進め方'ながら、運営哲学に若干触れているので、エントリーしておきます。

小見出しは、Put Employees before Customer。
お客も大事だけど、それよりも社員を大切にせよ、というような意味です。

「社員を大切にすれば、社員はお客を大切にする。そしてそれが、株主を大切にすることにつながる。近視眼的に株主に重点を置くのは間違っている。だから我々は社員にかなりの投資を行う。店員は241時間のトレーニングを受ける。業界標準は8時間だ。パートタイマーにも健康保険を提供する。'パパママ'シフトと呼んでいるのだが、子供を学校に送る迎えできるようなシフトを提供している」


この人の企業運営哲学は、'ハッピーな社員がお客をハッピーにする'です。
店員を変動費として扱おうとする傾向が強いアメリカの大手企業ばかりみていると、皆そうなのかとみなしがちですが、こういうアンチテーゼのような企業があって、伸びていて、働きたい会社として上位に入るということを、ぜひ知っておいて下さい。

鈴木敏仁 (06:40)


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2007年9月12日
ニーマン・マーカス、100周年記念ビデオをYouTube

高級百貨店のニーマン・マーカスが、創立100周年記念のビデオをYouTubeに載せてます。
Neiman Marcus - The Mystique Part 1

同社は高所得層でもさらに上層を顧客としてますから、何でYouTubeなの?という疑問がわいてくるところです。どうも、そういう人たちも見ているということもあるのですが、20縲鰀30台の超高所得層というのもいて、この若いお金持ちにもアピールしたいという思惑があるようなのですね。
最近Cuspと呼ぶ若年層ターゲットのフォーマットを開発しており、これも同じ流れのようです。


ちなみにこのビデオ、★2つでレーティングが低い。
視聴数も24万くらいで、決して多くはない。
評価は高いと言えないようですが、どうなんでしょうねえ。

鈴木敏仁 (02:38)


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2007年9月10日
メイシーズ業績不調の理由

メイシーズは地域をいくつかに分けて、地域ごとにカンパニー制を取っているのですが、北部地域(メイシーズノース)のCEOが大学に呼ばれての講義で、業績不振を認めたうえで、巷間指摘されている、買収した店名を一斉に変えたことが客離れにつながったという見方は間違っていると反論しています。

新規顧客獲得に対する努力と、メイシーズが何なのかということを伝える努力と、この2つに焦点を当てていなかったとしている。

シンボリックに言われているのがシカゴのマーシャルフィールズで、老舗として名が知られているこの有名な名称を変えたことに対する批判が多いのですが、買収以前から業績が悪く、店名を変えたことを不調の理由とすることはできない、と反論してます。

M&Aによる組織統合は簡単ではありませんね。
セイフウェイによる失敗が好例ですが、一気に変えるやり方は簡単ではないことは歴史が物語ってます。
新規顧客うんぬん以上に、名称を変えられたほうの社員の士気の問題の方が大きいのかもしれませんねえ。

セイフウェイのときは優秀なバイヤーがやる気をなくして結構やめたと聞いてます。クローガーは買収相手をしばらくそのまま独立運営させ、ようやく最近になって組織統合をゆっくりと始めてます。結果的にはこちらのほうがスムーズに進んでいる。

ということで、この発言を鵜呑みにはできないなというのが、正直な感想です。

>>現在出張中のため、エントリーが不規則となります。ご容赦くださいませ。

鈴木敏仁 (02:52)


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2007年9月10日
「Save Money. Live Better、変わるウォルマートのブランドプロミス」Vol.11,No.37

アメリカ流通eニュース

 アメリカのリテーラーのほとんどは短い企業キャッチコピーを持っている。店頭、ホームページ、チラシなどを見ると、企業名の後にくっついている短い文が必ずあるので分かると思う。英語ではタグラインとも、モットーとも呼ばれる。マーケティング用語でブランドプロミスとも呼ばれる。
 ウォルマートは19年間にながきにわたって'Always Low Prices'を使用してきた。これを、'Save Money. Live Better.'に変えたのである。正式発表は12日、ホームページを見るとすでに変更されている。
 このタグライン、実は企業ミッションのシンボルとしている企業がほとんどであり、つまりウォルマートの変更は彼らの戦略転換の象徴として見ることができ、小さいように見えてじつはかなり大きなニュースなのである。

鈴木敏仁 (01:30)


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2007年9月 7日
セイフウェイも小型フォーマット開発か?

セイフウェイのCEO、スティーブン・バードが証券会社主催のカンファレンス二ヵ所で今後の見通しやプランについてスピーチをしています。

○消費減退によって売上成長がスローダウンする可能性はあるが利益は落とさない。コスト管理には最大の注意を払っている。ライフスタイルフォーマットへの改装は年末までに全体の60%となる予定。長期的に3-4%の既存店成長率を見込んでいる。

>大手スーパーマーケットとして年間3縲鰀4%の既存店成長を長期的に維持すると言うのはかなり強気なのですが、業界史上かつてないほど巨額の設備投資で改装を続けてますから、そのくらいを見込まないと合わないとも言えます。改装直後は数値は上がるが、その後はかなり落ちるとする見方もあって、これについては予断は許しません。


○テスコに対抗するために小型店舗の開発を考えている。テスコが考えているフォーマットが本当に成功するためにはPBを一杯売らなければならない。アメリカの消費者に調査をしたとして、セイフウェイ、テスコ、ボンズの、どのPBの認知度が高いと思うか?比較にならないだろう。

>バードはテスコの成否はPBがカギだと考えているわけです。これは一つの視点として重要だと思います。


○2縲鰀3年間のスパンで、スーパーマーケットに関連する周辺ビジネスを開発してゆく。5年前に開始したプリペイドカードのブラックホークは現在北米最大となり、オーストラリア、フランス、ドイツ、メキシコ、英国にも進出を開始している。

>あまり知られてませんが、リテール各社の店頭で売られている商品券代わりのプリペイドカードは、セイフウェイの子会社が取り扱っています。レストランも開発しましたし、多角化がキーワードのようですね。

鈴木敏仁 (03:49)


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2007年9月 6日
ウォルグリーンの年間新店プラン

8月の業績発表と同時に、来年度の新店予定数を明らかにしました。550店舗、リロケーションを差し引くと475店舗だそうです。
ちなみにウォルグリーンの期末は8月末なので、この新店数は来年度の投資プランということになります。


550店舗ということは、一日に1.5店舗ずつ毎日オープンさせて行くことを意味してます。ダラーゼネラルやファミリーダラーといったバリューディスカウントストア並みの怒涛の年間出店プランと言って良いのでが、本質的にはウォルグリーンのほうが相当格が上のような気がします。

まず薬剤師というプロフェッショナルを雇用するという難しさがある。バリューDSのように誰でもポンと運営できるような仕組みとは根本的な部分で異なっています。

次に、この出店を内部留保でまかなってしまっていることです。ウォルグリーンのバランスシートには長期借入金という項目が今でも存在しません。


CVSのように新しい骨組みを作ってゆくための大胆なM&Aを続ける企業と、コツコツとクッキーカッターのように同じ店を増殖し続けるウォルグリーンと、この好対照の2つの企業が上位を占めてしのぎを削っているところに、米ドラッグストア業界のおもしろさがあります。

鈴木敏仁 (01:28)


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2007年9月 5日
ホームデポ、2億9000万株の買戻し

ホームデポは225億ドル分の株の買い戻しを予定していまして、昨日までに107億ドル、2億9000万株を買い戻したと発表しました。
同社はこの買戻しをHDサプライの売却益と手持ちの現金で実施する予定でいます。

さてこの買戻し、発表された時点で時価総額の4分の1以上にあたる、非常に大きな投資プランです。HDサプライの売却額が想定よりも下回り、予定額を下方修正するんじゃないかとも言われたのですが、いまのところ変更していないようです。


ホームデポはもともと手持ちの現金の多い企業なんですね。ナーデリの経営手法が投資家コミュニティに不信感を招き、この不信感を払拭するために、投資家が要求していたHDサプライの売却と、手持ち現金を投入しての株の買い戻しに踏み切った、と私は見ています。
過剰な手持ちの現金は、投資家による格好のターゲットとなりがちですし。

私はこのプランには大反対です。
現在のホームデポに必要なことは、225億ドル(日本円で3兆円弱!)という巨額の予算を株の買い戻しに振り分けることでは、絶対にないと考えます。
ナーデリ政権下に、生え抜きの優秀な社員が大量にやめてしまった。ホームデポの社風を受け継ぐ人たちがいなくなってしまって、幹部もほとんどが外部からの人たちで、どうやってこれからを乗り切ってゆくのか。このあたりのピクチャーがあまり見えてこない。

この予算を、社員教育に使うべきじゃないのか。
ホームデポの店舗レベルのサービスの低下はかなり問題視されているんですが、いいんでしょうかね。

投資家に媚びるホームデポ危うし、です。

鈴木敏仁 (01:17)


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2007年9月 4日
シアーズ、40%の大幅減益

シアーズが第2四半期の決算で、40%の大幅な減益となることが分かりました。売上高は4%ダウン、減収減益です。
大幅減益の理由は、昨年同時期に金融事業で大きなゲインを計上していたからなので、小売事業がいきなり大きく傾いたというわけではないようです。

ただ既存店成長率は、シアーズが4.3%減、Kマートが3.8%減で、相変わらずマイナス成長。
シアーズとKマートが合併したのは03年のことですが、それ以来プラス基調になったという記憶がなく、たぶんそれ以前もしばらくはマイナスだったはずなので、とするともうかれこれ5年近くも既存店の売上高が落ち続けていることになります。

これで、営業を継続していること自体に、驚きを感じるのは私だけでしょうかね。

いちおう赤字ではない。

一杯売らなくても利益が出てれば良いという、小型のバリューディスカウントストア型の発想をオーナーのランパートは持っているふしがあり、だからOK、ということなんでしょうか。

この人は構想をいまだまったく語らず、両者がどうなるのか、ずっと不透明なままです。縮小均衡のままで行くのかな。

不振な決算を目にするたびに、シアーズホールディングがいったいどこに向かっているのか、いろいろ考えてしまいます。

鈴木敏仁 (03:42)


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2007年9月 3日
「中堅スーパーマーケット、ハイビーの強さは店舗分権にあり」Vol.11,No.36

アメリカ流通eニュース

 中西部を商勢圏とするスーパーマーケットのリージョナルチェーンにハイビーという企業がある。昨年度の売上高は43億9000万ドル、店舗数は197店舗、従業員数は約2万7,000人。売上高ランキングでは18位、例えばウェッグマンズが22位、トレーダージョーズが19位、ホールフーズが15位と言えば、おおよそどの程度の企業であるかがお分かりいただけることと思う。
 中西部と言えばシカゴだが、本社はアイオワの州都デモインにあり、地図で言うと真ん中寄り、つまり田舎をメーン商圏としているわけである。そのためか、日本ではあまり知られた企業ではない。また上場していないため、詳しいことがほとんど分からない。ところが最近アメリカの界誌で、優秀なリージョナルプレーヤーとしてこの企業の名前を目にする機会が増えてきているのである。
 この企業に関する資料を入手したので、簡単にまとめておこうと思う。強さの根源は、店長への大胆な権限委譲にあるというのが論旨である。

<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>

鈴木敏仁 (01:28)


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