2006年7月 1日
[月刊MD]戦略としての差別化を考える

価格へのこだわりは小売業の志
 小売企業が競合を戦い抜く場合、価格問題が最重要テーマであることは議論を待たない。価格競争は無益だなどと語る識者がたまにいるが、自分の胸に耳を当てながらよく考えてみると良い。同じ商品を安く売る店があったら、そちらで買うに決まっているのだ。人間というものは、そういうものだ。
 価格を下げるための努力は流通業者の使命であり、これが世の中を発展させてきた原動力でもあり、これを放棄することは志を捨てるに等しいだろう。
 ウォルマートがあれだけ大きくなって、今でも成長を続けている理由の一つに、アイテムマーチャンダイジングというものがある。単品に徹底的にこだわってMDを構築しようとする考え方で、従ってアイテムの価格にも執拗なほどにこだわる。これを世界最大の売上高を誇る企業になってもやっているから、今でも失墜せずに成長を継続できている。
 ただ、価格を下げる努力は小売業の志ではあるのだが、戦略なくしてむやみな戦いを続けると、いつか泥沼に陥るから不毛だと考えることは普通ではある。
 ウォルマートもおそらく80年代初頭に価格競争の壁にぶつかったのだと思うのだが、しかしこの企業はメーカーからのリベートに頼って値下げ販売する旧来の手法から脱却して、EDLP/EDLCという新たなビジネスモデルを作り上げることで、流通業界に革新をもたらしてしまった。アイテムの価格にこだわり続けることは旧来のやり方では泥沼化は避けられないわけだが、異なる次元へと昇華することでさらに価格を追求し続けることに成功した稀有の企業と言う事ができるだろう。
 参考までに、同社のアイテムをベースとする考え方は、カテゴリーをベースとするカテゴリーマネジメントとは袂を分けており、ウォルマートはわが道を行ってしまっている。ウォルマートのビジネスプロセスに対抗するために生まれたのがECRであり、SCMであり、カテマネであり、と考えると、ウォルマートが対抗勢力のやり方に迎合する必要など無いわけだ。
 また単品ごとの在庫管理を徹底する単品管理とはまた違う。個々のアイテムが売れるのか売れないのか、価格はそれでいいのか、といったことをバイヤーが執拗に考え抜くことがアイテムMDであり、在庫の管理手法はまた別の話だ。
 小売業とは個々のアイテムについて価格を含めて考え抜きながらこつこつと積み重ねて行くビジネスであり、そのプロセスであるマーチャンダイジング(MD)こそがこのビジネスの成否を決定するものであることについては、誰も異論がないだろう。

<続きは月刊マーチャンダイジング06年7月号をご覧下さい>

鈴木敏仁 (02:26)
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