2007年7月 2日
「ショッパーズドラッグマートに見るビューティケア強化の新たな方向性」Vol.11,No.27

アメリカ流通eニュース

 先々週に某メーカーさんの米国研修で、カナダに本拠を置くショッパーズドラッグマート(SDM)というドラッグストア(Dgs)の店舗と本社を訪問する機会があった。地続きで、白人系がマジョリティを占め、言葉も英語が通じるため、アメリカと同じ感覚で訪問してしまうのだが、良く見るとすべてが微妙にアメリカとは異なり、カナダはアメリカに長い外人の私には実に興味深い国である。
 その理由は、イギリス系(またはアングロサクソン文化)の影響色濃いアメリカに比べると、フランス系(またはローマ文化)の影響が強いからだ。ざっくりと言ってしまうと、アメリカとヨーロッパの中間ぐらいに位置するのがカナダである。
 建築デザインやカラースキームといったパッと見た目も微妙に違うのだが、アングロサクソンよりもセンスが良いように個人的には感じ、そういう意味ではカナダの小売企業もベンチマークすべきだと思った。
 さてこの企業、ビューティケア強化に近年取り組んでいるのだが、なるほどこういう手もあるのかと合点がいったのである。

*****

 まずは企業プロフィールから。売上高はドルベースで77億8600万ドル(前年比8.9%増)、既存店成長率6.5%増、店舗数967、となっている。競合のジャン・コトゥは109億ドルを超えているのでSDMは業界2位となるが、ジャン・コトゥの売上高には今年ライトエイドに売却した米国事業も含まれていて、カナダだけに限定すると14億ドルとなり、SDMがカナダ国内では断トツの1位である。
 ドラッグ市場に占める比率は38%で寡占だ。シェアで言えばウォルグリーンよりも規模の大きな企業なのである。
 さてこの企業がビューティケアに取り組みを開始したのは2000年からである。目的はもちろん調剤以外の、業界用語で言うフロントエンドの強化なのだが、これはアメリカのDgsも同じ課題を抱えて取り組んでおり、そしていますでに水平展開を始めた結果を見るに、SDMは頭一つぬけている感がある。
 この展開をはじめた売場が、ビューティブティック(BB)である。以下簡単に特徴をまとめる。
●店舗面積はおよそ300坪程度なのだが、30縲鰀50坪ぐらいを壁で仕切り、ここにシャネルやディオールと言ったプレスティージブランドを集める。
●入り口を入るとこのBBを必ず通らなければならないレイアウトとなっている。
●ブランド企業による派遣員はいない。壁面の商品のほとんどは自由に手に取れる。
●SDM社員としてのコスメティシャン数人が常駐し、コンサルティング販売する。売上高に応じてコミッションが支払われる。
●ブランド商品のマーチャンダイジングにSDMは関与しない。
●この壁面の裏側、通常の売場側の壁面にメイベリンといったマスコスメティクスが並ぶ。
 カウンターの中においておいたブランドコスメを外側に出して陳列するという段階から、BBとして独立した売場を作る段階まで、ステップに分けて徐々に完成させてきたのだという。テーマはマスティージ、つまりドラッグストアのマスコスメと、デパートメントストア(Dps)のプレスティージコスメの、中間コンセプトをここで実現しようとしているのである。

★Dgsがマスティージを実現する★
 さてこの売場を実際に見て、本社で話を聞いて、考えたことは、いまの時代の消費者には商品を自由に手に取らせることが必要なのではないかと言うことと、ブランド別にコスメティシャンがいて自社商品を押し売るアプローチがそろそろ古くなってきたのではないかと言うことである。
 このBBでは、お客は自由に歩き回り、プレスティージブランド商品を自由に手に取り、必要なときにコスメティシャンに相談することができる。さらにそのコスメティシャンはブランドからフリーなので、その人のニーズやウォンツを聞き取りながら、特定ブランドに束縛されずにコンサルティングができる。
 日本にもこういうニーズはあるのではないか。ただ我が国のDgsがこれができるかとなると・・・いろいろ考え込んでしまうカナダの視察なのであった。

鈴木敏仁 (01:04)
ペプシネックス



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