2011年1月24日
「販促効果が薄れたアメリカ市場」Vol.15,No.04

アメリカ流通eニュース

 1月の大手各社の業績はほとんどが予測を超える数値を残し、歳末から引き続きアメリカの消費はプラスとなって、景気が回復してきたような印象となっている。歳末直後の1月の消費傾向はその後を占うバロメーターとしてあまり機能しないと言われてはいるのだが、明るい材料として紙面を踊った。
 この消費について、一つ面白い調査結果があるのでここで紹介しようと思う。ここ数年続いた値下げ販促に消費者は飽きてしまっていて、効果がかなり薄れているという話である。
 つまりいま消費は、メーカーや小売企業による売上増を狙う意図的な販促とはまったく異なるところで動いているというわけなのである。(調査はSymphonyIRIによる)

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 アメリカは値下げクーポンをよく利用する文化を持っていて、これがベンチマークされることが多いのだが、昨年のクーポンの償還額は過去最高を記録したものの、上半期から下半期までの推移を見ると20億ドルから17億ドルへと15%もダウンしており、クーポン効果が明らかに減じているようだ。
 店頭の価格販促については、30%以上の商品がなんらかの価格販促を実施しているカテゴリーが全体の60%から70%へと増えていて、販促は明らかに増えている。しかしながら、一回の販促企画による売上増の効果は57%も減っているのである。販促商品は増えているが、企画毎による売上成長率が減っていると言うことは、価格販促による効果は水のように薄まってきているということを意味している。
 この事実を象徴しているのが、昨年前半のウォルマートによる値下げキャンペーンだろう。プロジェクトインパクトの既存店に対する効果が思うように上がらないため、いわば起死回生の一発として大掛かりな価格販促を実施したのだが、効果はなかった。
 この販促、メーカーの支援を受けず自腹で実施したため、失敗の痛手は大きかった。直後に、米国ウォルマート事業の責任者が更迭、マーチャンダイジングの責任者が辞職したのも、その影響の大きさを物語っている。
 また業態の本質として値下げというものを本来しないのがMWCなのだが、ここ数年クーポンを増やしてきたのがコストコで、ところが情報筋からの話として、このクーポンの効果がどんどん薄れてきているのだという。
 分かりやすいのがP&Gだ。12月に石けんや洗剤といった定番商品の売上が減ったのだが、価格販促企画を減らしたのにもかかわらず1月には売上が戻ってきているそうだ。つまり、販促企画とは別のところで売上が増減しているというわけである。
 考えられることは、消費者が価格販促慣れしてしまったということ、値下げしたところで買いだめする余裕が今のアメリカの消費者にはまだ無いということの2つである。調査は後者を理由として採用している。
 ウォルマートは昨年半ばから基本に立ち返るということで、EDLPへの回帰を宣言している。この原点回帰戦略、消費者が価格販促に反応しないという消費状況を鑑みるにまったく正しいということができる。そういう意味でウォルマートの動きは実に早い。

◇いつか飽きられるプロモーション◇
 この調査はさらに、グルーポンにも言及している。150社への調査では32%が儲けが出ず、とくに外食は42%が無駄に終わっていると回答しているそうだ。クーポン以上に出費しない、一回来店するだけで戻ってこない、といった理由が添えられている。またクーポンの発行当初よりも、時間が経つにつれて効果が薄れて行くという結果もすでに出ている。
 要は飽きられてしまうというわけだ。
 さらに今はメールやソーシャルサイトなど、消費者が価格販促メッセージに触れる機会が以前よりも飛躍的に増え、これも効果を減ずるに一役買っている。
 ハイローは麻薬で一回はじめるとやめられなくなる。景気の悪化という環境の変化によって強い麻薬を打ち始めたのだが、薬慣れしてしまってその強い麻薬も効かなくなってしまったといことだ。
 価格販促とは結局そういうものなのである。とりわけどっぷり浸かっている日本のメーカーと小売企業は、この話をじっくり考える必要があると思っている。

鈴木敏仁 (09:01)

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